国際信販事件(退職強要・不法行為)

国際信販事件・東京地裁平成14年7月9日
「Y1会社に勤務していたXが、Y1会社から解雇の意思表示を受けその効力を争ったもの。自ら退職するまでの賃金と、在職中に従業員から受けた嫌がらせに対する損害賠償を求めた。判決はY1らのXを退職させるための嫌がらせ行為に関し、Y1会社代表者らについてはそれぞれ民法709条の不法行為責任を、そしてY1会社については、商法261条3項、78条2項、民法44条1項に基づき損害賠償責任を認めた。」

[判決の要旨]
〈解雇の効力について〉《旅行事業部の廃止に伴う整理解雇につき、事業部を廃止すべき高度の必要性があったとは言えない。人員削減をする経営上の必要性は大きいとはいえない。Y1は配置転換可能性の有無を検討したこともなくXに配置転換を提案したこともない。また人件費及び諸経費を削減する等の本件解雇を回避する努力を十分尽くしたとはいえない。さらにY1は、X及びXの所属する労働組合との間で本件解雇について十分な説明や協議をしたとはいえない。》として、本件解雇はXが時給社員であり正社員とは立場が異なるいうY1の主張を考慮しても、客観的合理的理由を欠くものであるから、解雇権の濫用として無効である。

〈不法行為について〉XがY1に入社して間もなく、Xの業務遂行に対する不満から旅行事業部に所属する一部の従業員がXに反発するようになり、XとAが男女関係にあるとの事実に反するうわさを社内に流布したところ、社長であるY2及び専務Y3は、Xから事態の改善を求められたにもかかわらず、うわさを解消するための特段の措置をとらなかった。また、Xには物産展業務を担当させたがXの業務が繁忙であり、勤務が早朝から深夜まで長時間にわたることや休日にも出勤しなければならないことがしばしばあり、Xが勤務状況の改善を申し出ていたにもかかわらず、十分にこれに応じることなく、約半年もの間Xに過重な勤務を強いた。そして、Y1は、Aを懲戒解雇した後、Xを再び内勤業務としたが、Xには仕事らしい仕事を与えなかった。その間、他の従業員から侮辱的な発言等の繰り返し嫌がらせを受けた。Y1は、再就職のあっせんを希望した他の3名の従業員に対しては同業他社への就職をあっせんし、雇用の継続を確保したが、Xに対してのみこのような希望の有無を問うことなく、あえて他の従業員よりも先に解雇した。これらの一連の行為は、その経緯に照らすと、XをY1のなかで孤立化させ、退職させるための嫌がらせといわざるを得ず、Aが懲戒解雇された以降は、その傾向が顕著に現れている。そして、程度の差はあれ、このような嫌がらせがXの入社後間もないころから本件解雇の直前まで長期間にわたり繰り返し行われたこと、Y1の代表者であったY2とY3は当初からこのような事実を知りながら特段の防止措置をとらなかったこと、一部の行為は業務命令として行われたことからすると、これらの行為は、いずれもY1の代表者であるY2及びY3の指示ないしその了解に基づき手行われたものというべきであるから、Y2とY3は、それぞれ民法709条の不法行為責任を負う。そして、これらの不法行為は、Y2とY3の職務執行と密接な関係があるから、Y1は、商法261条3項、78条2項、民法44条1項に基づき損害賠償責任を負う。