エフピコ事件(第一審)(パワハラ・嫌がらせ・退職強要)

エフピコ事件(第一審)(水戸地裁下妻支部平成11年6月15日判決)

「Yの従業員であったXらが、Yから不当な転勤命令により退職を強要されたなどと主張して、債務不履行ないし不法行為に基づき、勤務を継続し得た向う1年間の得べかりし賃金、慰謝料及び会社都合退職金との差額の損害賠償を求めたもの。」

[判決の要旨]
労働契約関係において、使用者は労働者に対し、労働者がその意に反して退職することがないように職場環境を整備する義務を負い、また、労働者の人格権を侵害する等違法・不当な目的・態様での人事権の行使を行わない義務を負っているものと解すべきである。本件においては単なる「要請」である以上、転勤に応ずる義務を会社自ら設定していないにもかかわらず、また、そもそもXらは、それぞれ現地工場での採用に係るブルーカラー労働者であって、勤務地が契約上限定されており、転居を伴う配転に応ずる義務を負っていないにもかかわらず、さらに、現地工場採用における当事者の通常の意思解が転勤はないというものであり、将来転勤がありうるのであれば、採用面接時にも会社側から積極的にこの情報を開示すべきであるのにXらは、面接時において何らかかる説明を受けておらず、かえって、面接時に問いただして、本人希望以外転勤はないと説明を受けたXもいることからすれば、Xらに就業規則9条に基づく転勤義務は存在しないというべきであるにもかかわらず、Yは、あたかもXらにこれに応ずる義務があるように申し向けてXらを誤信せしめ、X1ら3名をして、義務なき退職届を提出する立場に追い込み、退職届の提出を拒否して、転勤命令効力停止仮処分を申請したX2ら3名に対しても、訴訟上においても命令ではなく要請であるとの主張を繰り返し、労働現場における処遇においても、従来女子パートが担当していた日勤の業務を割り当て、管理職や他の従業員から早くやめろとの明示、黙示のプレッシャーをかけるなどして会社が雇用を継続する意思がないことを様々に示して、それらの人格、名誉を傷つけるなどし、会社に辞めてもらうとの意思があることを肌身に感じたX2らも、その意に反してついに退職するに至ったことからすれば、Xらは、いずれも定年まで勤務する意思であったにもかかわらず、Yの虚偽、強圧的な言動や執拗な退職強要・嫌がらせによって退職のやむなきに至ったというべきである。そうすると、平成8年10月以来の会社のXらに対する一連の処遇は、転勤に応じないことを予測し、Xらに自己都合退職に追い込むことを意図してなされたものと推認されても仕方がないのであり、少なくとも、使用者としての前記配慮義務に反するものであって、その結果としてXらが有する意に反して退職させられない権利を侵害したものであるから、債務不履行ないし不法行為を構成するというべきである。