日本高圧瓦斯工業事件(辞職)

日本高圧瓦斯工業事件(大阪高裁昭和59年11月29日判決)
「就業規則の「退職を願い出て、会社が承認したとき、従業員の身分を喪失する」旨の規定は、民法627条2項所定の期間経過後もなお解約の申入れの効力発生を使用者の承認にかからしめる特約とするならば、労働者の解約の自由を制約することになるから、かかる趣旨の特約としては無効と解するとした原判決を維持した。」


[事案の概要]
Xらは、昭和45年頃からYに雇用された者だが、昭和58年8月15日までにYに対し書面をもって雇用保険の解約を申し入れ、同年9月15日から出勤しなくなった。Xらは、Yの退職金規定に基づき、自己都合退職による退職の場合の退職金の支給を求めた。一方、Yは、Yの就業規則では、従業員が「退職を願い出て、会社が承認したとき」に退職の効果が発生すると規定しており、Yは、Xらの退職を承認していないから、Xらの退職の効力は発生せず、Xらには退職金請求権が発生していないと主張した。


[判決の要旨]
当裁判所も、Xらの本訴各請求を正当として容認すべきであると判断する。


[原判決の要旨]
Yの就業規則12条は「退職を願出て、会社が承認したとき、従業員の身分を喪失する」旨規定していること、YがXらの退職の申出を承認しなかったことが認められる。ところで、右規定の趣旨及び適用範囲については、従業員が合意解約の申出をした場合には当然のことではあるし、解約の申入れをした場合でも民法627条2項所定の期間内に退職することを承認するについても問題がないが、それ以上に右解約予告期間経過後においてもなお解約の申入れの効力発生を使用者の承認にかからしめる特約とするならば、もしこれを許容するときは、使用者の承認あるまで労働者は退職しえないことになり、労働者の解約の自由を制約することになるから、かかる趣旨の特約としては無効と解するのが相当である。したがって、本件の場合、右就業規則所定の承認がないからといってXらのなした解約申入れの効果が生じないとはいえない。