勧業不動産販売・勧業不動産事件(出向中の権利義務)

勧業不動産販売・勧業不動産事件(東京地裁平成4年12月25日判決)
「出向先が出向元の実質上子会社であり、出向先には就業規則が存在しない場合、出向者は、出向先においても、親会社である出向元の就業規則の適用に同意しているものと解されるとした。さらに、出向元・先両社による降格等の懲戒処分を有効とした。」


[事案の概要]
原告Xは、不動産の売買・仲介等を主たる目的とする被告会社Y2に在籍しつつ、実質上Y2の子会社である被告Y1に出向中であったが、上司に反発し、侮辱的言動や誹謗、中傷にわたる言動を行ったため、Y1及びY2両者が、Y2の就業規則を適用して原告を懲戒処分(それぞれ本件懲戒処分1、本件懲戒処分2)に付したものである。


[判決の要旨]
Y2は、Xに対し、出向先であるY1〈における〉行為について本件懲戒処分2をしたが、XのY1への出向は在籍出向であり、XとY2との間の雇用関係はなお継続しているから、Y2は、出向元会社の立場から、Y1における行為について、Y2の就業規則に基づいて懲戒処分を行い得ると解すべきである。また、Y1はXに対し、Y2の就業規則を適用して本件懲戒処分1をしたが、Y1は、Y2の営業部門及び事業部門を母体にして平成元年10月に設立され、その代表取締役はY2の常務取締役であり、他の取締役もY2の取締役等を兼任し、実質上Y2の子会社であること、Y2はY1と業務上も密接な関連を有し、Y1の人事・給与等の管理をも行い、他方、Y1は、もっぱら仲介・販売等の営業活動のみを行い、実質的にはY2の営業一部門の体をなしていたこと、Y1大崎支店のXを含む3名の従業員すべてがY2からの出向であったこと、Y1は、社員が10名以上いない就業規則作成義務のない会社であって、現に就業規則が存在していないことが認められ、このような事情の下では、Y2からY1大崎支店に出向したXを含む3名の従業員は、Y1においても、親会社であるY2の就業規則の適用について同意しているものと解されるから、Y1はY2の就業規則を適用して懲戒処分を行い得るものと解するのが相当である。〈中略〉Xは、本件各懲戒処分は、出勤停止、役付罷免及び降格という何重もの不利益を科したものであって、Xの行為に比して過重な処分であると主張するが、Y2とY1は、出向元会社と出向先会社として、それぞれ異なる立場からXに対し本件各懲戒処分を行ったものであること、Y1のXに対する出勤停止処分についても、前記の事情〈上司に対する侮辱的言動、誹謗、中傷にわたる言動が繰り返され、事情聴取の際にも反省の態度が全く見られず、事情聴取後においても、上司を誹謗中傷する言動をしていること〉から付されたものであることに照らせば、Y1が出勤停止、役付罷免を、Y2が役付罷免及び降格をXに付したことをもって、何重もの不利益を科したとか、Xの行為と比して過重な処分であるということはできない。〈本件各懲戒処分には裁量権の濫用はなく、Y1、Y2らのXに対する本件各懲戒処分は有効であるとされた。〉