労働契約に伴う権利義務に係る判例一覧

就労請求権
読売新聞社事件(昭和33年 東京高裁決定)

「労働者の就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合又は業務の性質上労働者が労務の提供について特別の合理的な利益を有する場合を除いて、一般的には労働者は就労請求権を有するものでないとされた。」

レストラン・スイス事件(昭和45年 名古屋地裁決定)
「調理人としての技量は少時でも職場を離れると著しく低下するものであることから、本件労働者は業務の性質上労務の提供につき特別の合理的な利益を有する者として就労請求権を有するとされた。」

労働契約継続中の秘密保持義務
古河鉱業足尾製作所事件(昭和55年 東京高裁判決)

「労働者は労働契約に基づく付随的義務として、信義則上、使用者の利益をことさらに害するような行為を避けるべき責務を負い、その一つとして使用者の業務上の秘密を洩らさないとの義務を負うとされ、秘密漏洩を理由とする懲戒解雇が就業規則に基づき有効とされた。」

美濃窯業事件(昭和61年 名古屋地裁判決)
「就業規則に業務上の機密を漏洩しないこと等の規定があったこと等の事情の下で、雇用契約存続中、労働者は、使用者に対し会社の不利益になる事項及び業務上の機密を漏洩してはならない義務等を負うとされ、機密の漏洩について労働者の債務不履行及び不法行為が成立するとされたが、損害額の立証がないとして損害賠償請求は棄却された。」

労働契約継続中の競業避止義務
日本コンベンションサービス事件(平成12年 最高裁第二小法廷判決)

「在職中に同種の事業を営む新会社を設立するため他の労働者を新会社に勧誘したこと等が雇用契約上の誠実義務に反する違法行為であるとして、不法行為責任を認めた原審の判断を認容した。」

エープライ事件(平成15年 東京地裁判決)
「労働者が、自己又は競業会社の利益を図る目的で、職務上知りえた販売価格を競業会社に伝え、競業会社を顧客に紹介した等の行為は、雇用契約上の忠実義務に違反する債務不履行であるとともに不法行為でもあるとされた。」

兼業禁止義務
橋元運輸事件(昭和47年 名古屋地裁判決

「会社の企業秩序に影響せず、会社に対する労務の提供に格別の支障を生じせしめない程度の二重就職は、就業規則で禁止している二重就職に含まれないとしたが、管理職であった労働者が競業会社に二重就職したことは、会社の企業秩序をみだし、またはみだすおそれが大であったとして、労働者の懲戒解雇を有効とした。」

国際タクシー事件(昭和59年 福岡地裁判決)
「タクシー運転手の新聞配達業務への従事について、出勤前に新聞配達に従事していた時期については会社への労務の提供に格別支障を生じず兼職禁止規定に該当しない一方、出勤・出庫後に新聞配達に従事していた時期については企業秩序に影響を及ぼし労務の提供に支障を来たすとして兼職禁止規定に該当するとされたが、これを理由とする懲戒解雇は、労働者の不利益が著しく大きく、解雇権の濫用として無効とされた。」

日通名古屋製鉄作業事件(平成3年 名古屋地裁判決)
「労働者が就業時間外に適度な休養をとることは誠実な労務の提供のための基礎的条件であり、また、兼業の内容によっては使用者の経営秩序を害すこともありうるから、労働者の兼業を使用者の許可・承認にかからせることも一般的には許され、勤務時間が本業の就業時間と重複するおそれもあり、時に深夜にも及ぶ本件兼業は、会社への誠実な労務の提供に支障をきたす蓋然性はきわめて高いとして、労働者の懲戒解雇を有効とした。」