ネスレ(旧ネッスル)日本・日高乳業事件(出向中の権利義務)

ネスレ(旧ネッスル)日本・日高乳業事件(最高裁平成7年2月23日第一小法廷判決)
「出向元も、労働契約上の当事者と同視しうる程度に出向労働者の労働関係上の諸利益に直接の支配力ないし影響力を及ぼしうる地位にあったということができる場合には、労働組合法第7条所定の使用者として救済命令の当事者となりうるとされた。」


[事案の概要]
X1会社とX2会社とは、別法人であるが、X2はX1の製品を製造する旨の業務提携の合意をしており、密接な関係にあった。X2の従業員は正社員と臨時社員とからなり、正社員は、すべてX1により採用されてX1から出向した従業員であり、これらの正社員の数に比して臨時社員の数は極めて少なかった。X2の設立時に、X2とA労組(X1会社の労働組合)とはX1とA労組との間で決定した労働条件をX2会社日高工場に適用するとの合意をしていたことから、日高工場での労働条件も結局は、A労組とX1との交渉により決定されていた。X2内部での人事異動はその工場長によって決定されていたが、その工場長の地位はX1からの出向者により占められるのが当然とされており、日高工場においてはX1と人事的にきわめて密接な交流が図られていた。Y労働委員会は、昭和62年2月27日付で、A労働組合日高支部からの申立てを受け、組合員からのチェック・オフ、別組合への引き渡し等を不当労働行為として、X2に対して、チェック・オフ禁止、すでに控除した組合費及びそれに対する利息の支払等の不当労働行為救済命令を出した。しかし、A労働組合日高支部からは、昭和62年3月6日ころ最後に残っていた3名の組合員が脱退をした結果、組合員が1人もいなくなっただけではなく、同年4月にはX2会社がその日高工場の営業施設を第三者に譲渡したことにより、日高工場においてX1会社の労働組合の組合員が労務に従事する可能性が当面失われたため、自然消滅した。ただし、その清算はまだ終わっていなかった。X1及びX2は、Y労働委員会による上記不当労働行為救済命令の取消しを求めて裁判を起こした。


[判決の要旨]
〈原判決が、X2の日高工場での労使関係に関して、別会社であるX1が労働組合法第7条所定の使用者であると判断したことについて、〉所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。〈本件不当労働行為救済命令の効力について、〉救済命令で使用者に対し労働組合への金員の支払が命ぜられた場合において、その支払を受けるべき労働組合が自然消滅するなどして労働組合としての活動をする団体としては存続しないこととなったときは、使用者に対する右救済命令の拘束力は失われたものというべきであり、このことは、右労働組合の法人格が清算法人として存続していても同様である。これを本件についてみると、組合員が一人もいなくなったことなどにより日高支部が自然消滅したことは、原審の適法に確定するところであるから、X2に対し控除組合費相当額等の日高支部への支払を命じた本件救済命令の前記部分は、既にその拘束力が失われているものというべきである。そうすると、X2がその取消しを求める法律上の利益は失われたというべきであって、右部分の取消しを求める訴えは却下すべきこととなる。


[原判決の要旨]
〈本件不当労働行為救済命令におけるX1の当事者適格について〉〈事案の概要第1段落の事実を認定した上で、〉以上の認定事実によれば、X2は実質的にX1の一工場と同視することが可能であり、少なくとも日高工場における労働関係は、もっぱらX1の意向に従って律せられていたと推認することができ、仮に日高工場の労働関係をめぐって不当労働行為が行われたとするならば、その工場に属する労働者と直接労働契約関係に立つX2が救済命令の当事者となりうるのは勿論であるが、更に、X1も、労働契約上の当事者と同一視しうる程度に日高工場の労働者の労働関係の諸利益に直接の支配力ないし影響力を及ぼし得る地位にあったということができるのであるから、労働組合法7条所定の使用者として救済命令の当事者となりうるといわなければならない。