福知山信用金庫事件(懲戒事由・内容と手続)

福知山信用金庫事件(大阪高裁昭和53年10月27日判決)
「「誓約に違背する行為をしたときはいかなる処分を受けても異議を申し立てない」旨の誓約書には包括的な異議申立権の放棄を意味する文言を含んでおり、また、労働者の内心の自由にかかわる問題を含んでいることから、この誓約書を提出しないことをもって企業秩序を紊乱するものとはいえず、懲戒事由とはなりえないものとされた。」


[事実の概要]
金融機関であるY金庫は、不正集金を行って有罪判決を受けた組合執行役員を諭旨解雇とした。これに抗議する運動を就業時間中に行っていたとして、Y金庫はXらを11日間の謹慎処分に付したところ、Xらは2日間にわたって出勤し、さらにY金庫の申請による立入禁止仮処分命令を発した裁判所に対しても抗議行動を行った。そこでY金庫はXらに反省の色がないとして、再度12日間の謹慎処分に付し、裁判所から同様の立入禁止処分を得た。また、Xらに対して「本日をもって謹慎処分を解除されましたならば、謹慎中に私の過去の職員としての行為について十分自己反省を致しました。今後は金庫職員として恥ずかしくない勤務に努め、労使関係につきましても、良識に基づいて合理的に行動することを誓約いたします。尚万一この誓約に違背する行為をしました時には、いかなる処分を受けましても異議は申し立てません」との記載の誓約書の提出を求めたが、Xらが提出しなかったため、Y金庫は就業規則の「再度減給処分を受けて反省しないとき」に基づき、Xらを諭旨解雇処分に付した。XらはY金庫職員としての地位の確認を求めて出訴。1審は諸事情からみて諭旨解雇は酷であり、妥当性を欠く解雇権の濫用として無効と判事した。Y金庫が控訴したものである。


[判決の趣旨]
本件誓約書を提出しなかったことが、これまでのXらの行為と相まち、本件解雇を正当ならしめるものであったかどうか、について考えるに、Y金庫の要求した誓約書には包括的な異議申立権の放棄を意味するものとも受け取れる文言が含まれていて、内容の妥当を欠くものがあったばかりでなく、そもそも本件のような内容の誓約書の提出の強制は個人の良心の自由にかかわる問題を含んでおり、労働者と使用者が対等な立場において労務の提供と賃金の支払を約する近代的労働契約のもとでは、誓約書を提出しないこと自体を企業秩序に対する紊乱行為とみたり特に悪い情状とみることは相当でないと解する。そうだとすると、本件においては、Xらの本件誓約書の不提出並びにこれに関連する緒情状を考慮に入れても、解雇の正当性を基礎づけることはできず、結局本件解雇は懲戒権の濫用としてその効力を生じないものと判断せざるを得ない。