立川バス事件(懲戒の種類・内容と手続)

立川バス事件(東京高裁平成2年7月19日判決)
「始末書を取り将来を戒める譴責処分の無効確認の訴えについて、過去の事実関係又は法律関係の確認を求める訴えを起こす必要性は特になく、労働者が当該企業から退職している状況においては、訴えの利益を欠いているとして却下された。」


[事実の概要]
旅客自動車運送を業とするY社にバス運転手として雇用されたXは、Y社に採用されるまでに同業他社3社に勤務していた経歴を履歴書に記載しなかった。この事実を把握したYは賞罰委員会を経て、Xを譴責処分に付した。そこでXは譴責処分の無効の確認及び精神的苦痛に対する慰謝料の支払いを求めて出訴した(Xは出訴後にY社をて定年退職している)。1審はXの請求を棄却したことから、Xが控訴したものである。


[判決の要旨]
確認の訴えは、判決をもって法律関係を確定することが、法律上の紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切である場合に限って認められるものであるから、通常は、紛争の直接の対象である現在の法律関係について個別にその確認を求めるのが適当であるとともに、それをもって足り、その前提となる法律関係、特に過去に遡って法律関係の存否の確認を求めることは、現在の権利又は法律関係の個別的な確定が必ずしも紛争の抜本的解決をもたらさず、かえってこれらの権利又は法律関係の基本となる過去の法律関係を確定することが、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的解決のため最も適切かつ必要と認められるような場合に、例外的に許容されるというべきである。本件譴責処分の無効確認の訴えは、現在の法律関係の確認ではなく、過去の事実ないし法律関係の確認を求める訴えであると解されるところ、本件譴責処分について、このような例外的事情が認められるか否かを検討するに、〈証拠略〉によると、Y社の就業規則においては、譴責処分は、始末書を取り、将来を戒めるものとされている〈中略〉が、これ以外に特段の法律効果(例えば昇給延伸といった効果)を生ずることについては主張もなく、また、これを認めるに足る証拠もない。右譴責処分の内容のうち、将来を戒めるというのは単なる事実行為にすぎず、法律効果としては、せいぜい始末書の提出義務が考えられるにすぎないが、Xが現在Y社を定年退職していることはXの自認するところであるから、右義務が現在もはや存在しないことは明らかである。〈中略〉したがって、Xの請求中けん責処分の無効確認を求める部分は確認の利益を欠き、不適法として却下を免れない。