日本コロムビア事件(配置転換・勤務場所の限定はない)

日本コロムビア事件(東京地裁昭和50年5月7日判決)
「求人票や募集広告における勤務場所は、当初における予定の職種、勤務場所を一応示すにとどまるものであって、将来とも職種、勤務場所を限定する趣旨のものとみることは困難とした。」


[事案の概要]
Y社は、Y社の川崎事業所テレビ事業部テレビ製造部第一製造課勤務のXに対し、本社電機営業本部サービス部勤務を命ずる旨の配転命令を発した。Yは、Xがこれに応じなかったため、就業規則第74条〈懲戒の処分は次の6種とする。〉第5号〈諭旨退職…退職願を提出するよう勧告し、退職させるものとする。退職願を提出しないときは懲戒解雇とする。〉による諭旨退職とする旨の意思表示をするとともに、Xが退職願を提出しないときは懲戒解雇する旨を通知したが、Xが退職願を提出しなかったため、Xを懲戒解雇した。


[判決の趣旨]
〈職種、勤務地の限定について〉一般に、労働者は雇用契約において使用者に対し、労務の提供を包括的に約するのが通常であるから、使用者は、労働者と個別的に勤務場所、職種等を限定する特別の合意をしない限り、雇用契約の趣旨の範囲内において労働者に対し、勤務場所、職種等を具体的、個別的に決定して労務の提供を命ずることができ、労働者はその命令に従って労務を提供すべき雇用契約上の義務がある。そして、Yの就業規則第30条〈業務上の都合で、転勤、職種の変更または出向を命ずることがある。同項の場合、従業員は正当な理由なくしてこれを拒むことはできない。〉には前認定のとおりの定めがあるのであるから、右に述べたところは、Yとその従業員の場合についてはより強くあてはまる。〈Yの〉求人申込票の職種(従事する仕事)欄には「テレビ(殊にカラーテレビ)製造関連業務」と就業場所(勤務地)欄には「川崎工場」との記載があることが認められる。しかし、前段で説示したところと求人申込票の性質を考慮すれば、右記載は雇用当初における予定の職種、勤務場所を一応示すにとどまるものであって、将来とも職種、勤務場所を右記載のとおり限定する趣旨のものとみることは困難である。したがって、右記載のみをもって、Xが職種、勤務場所を右記載のとおり限定されてYに雇用されたものと認めることはできないし、他に右事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件配転命令が雇用契約に違反する無効なものであるということはできない。〈配転命令の必要性及び人選について〉〈Yの静岡、広島、四国の各営業所では、日常業務にすら支障が生ずるほど営業技術課員が不足しており、早急に補充する必要があったこと、Yは、基本的基準((1)高卒程度の学識を有し、カラーテレビ修理技能を十分修得し、営業技術課員としての適正を有するもの、(2)職務能力の互換性の付与と本人の将来を考慮し、教育、訓練の可能な比較的若い層のものであること、(3)住宅等の関係から身軽な独身者が望ましいこと)及び具体的基準((1)調整班内で3、4年の勤務者または少なくとも同程度の知識、技能を有するもので、特に需要の増加しているカラーテレビの修理技能を有しているもの、(2)独身者であること、(3)配転により所属職場の作業能率、生産計画に支障を来さぬこと)により、Xら3名を適任者として決定したことを認定した上で、〉右認定した事実によれば、本件配転命令は前記三電機営業所の減員補充というYの業務上の必要に基づくものであり、営業技術課要員の人選基準(基本的基準と具体的基準の両者を含む。)の内容に特に不合理なところはないし、Xは右人選基準の要件を満たしていたものということができる。〈懲戒解雇について〉本件配転命令は有効であるから、Xはこれに従う義務があった。それなのに、Xは、昭和45年10月20日〈配転命令を発出してから1ヶ月程度経過した時期〉に至るもこれに応じなかったのである。本件配転命令は就業規則第30条に基づくものであり、これに応じないことは、それ自体Yの企業秩序を紊す重大な規則違反であり、第73条第5号に準ずる行為として、第73条第20号〈その他前各号に準ずる行為のあったとき〉に該当する。そしてこのような行為におよんだXをそのまま企業内に残しておくならば、Yの企業秩序維持は困難となるから、XはYから排除されてやむを得ない。前認定のとおり、Yは同月20日Xに対し諭旨退職とする旨の意思表示と懲戒解雇に関する通知をしたが、Xから所定の日時までに退職願の提出がなかったので、同月26日Xに本件懲戒解雇の意思表示をしたのであって、本件懲戒解雇は有効である。