日本オリーブ事件(変更解約告知)

日本オリーブ事件(名古屋地裁平成15年2月5日決定)
「労働者が労働条件の変更に異議を留めて通常業務に従事している場合、労働条件の統一的画一的処理の必要性の面で具体的問題が生じているとはいえず、「やむをえない業務上の都合」という解雇事由には該当しないとした。」


[事案の概要]
Yは、化粧品・医薬品等の製造・販売等を業とする株式会社であり、Xは、昭和59年12月ころYに入社し、営業活動に従事してきた者である。平成12年5月1日、Yは、従業員に対して、同年6月1日より賃金額の大幅な変動を伴う新人事管理基本制度・賃金制度を導入することを通告した。新人事管理基本制度は、従業員をコース別に処遇するもので、新賃金制度は、職群・グレードに基づく役割給と業績給及び諸手当からなり、役割給を定額に抑え、グレード別に上限と下限の幅のある業績給を加算するものとしたものである。これによると、Xの賃金は、半額近く減額される。Xは、Yによる説明会席上で、また、組合を通して、新制度のXへの適用に対する不同意を通告した。Xの同意が得られないままYは、平成13年7月支給分以降のXへの賃金を減額し、Xは、その差額について、未払い賃金等請求事件(未払い本訴)を提訴した。なお、未払い本訴提起後、Yは、新人事管理制度・賃金制度に対応して就業規則を変更した。(※未払い本訴は、本決定の後、和解している。)平成14年6月3日、Yは、Xに対し、同年7月3日付でも解雇を通告した。本解雇通告には、解雇理由として、新制度に不同意として適用を拒むこと等による「やむを得ない業務上の都合」(就業規則19条3号所定の理由)等が挙げられていた。


[判決の要旨]
〈就業規則19条は〉労働者側に懲戒事由がある場合の懲戒解雇とは別に普通懲戒事由を定めたものであるが、労働者側に勤務不能、不適という一定の帰責事由がある場合の解雇事由として1号と2号を規定し、4号の「その他やむを得ない事由があるとき。」以外に3号の「やむを得ない業務上の都合によるとき」とは、労働者側には責めに帰すべき事由がなく、専ら使用者側の事情による解雇の場合に限定したものであって、労働者側の事情による解雇は4号に定められた者と解するのが合理的と解される。〈中略〉3号の「やむを得ない業務上の都合によるとき」として、Xにこれらの事由があるか否かを判断することは合理性を欠くというべきである。そもそも、前記の通り、Xの責めに帰すべき事由の存在について、3号の「やむを得ない業務上の都合」に該当するものと解することはできないものというべきであるが、この点をおくとしても、Xが他の社員が同意している新人事管理基本制度及び就業規則の変更に不同意とし、その適用を拒んでいるからといって、そのことが解雇を正当とする「やむを得ない業務上の都合」に該当するものと解することはできない。すなわち、Xは、新人事基本管理制度の導入及び就業規則の変更に不同意であるとして、未払い本訴を提起しているものであるが、Xは、新人事管理基本制度及び就業規則の変更に異議を留めて通常業務に従事していることが一応認められ、労働条件の統一的、画一的処理の必要性の面で具体的問題が生じているとは言えず、Yの主張は採用することができないというべきである。以上によれば、Yが主張する解雇事由については、いずれもこれを一応認めるには足りないというべきであって、解雇事由を一応認めるに足りない以上、その余の点について判断するまでもなく、本件解雇は無効といわざるを得ない。