上野労基署長(出雲商会)事件(解雇予告)

上野労基署長(出雲商会)事件(東京地裁平成14年1月31日判決)
「解雇の効力は行政官庁による解雇予告除外認定の有無、内容に関わりないとした。」


[事案の概要]
Xは、宝石・貴金属の輸入、製造販売を営む株式会社であり、Aは、Xに雇用され宝石加工の業務責任者の地位にあった者であるが、加工先に交付すべき金、プラチナ等をAが窃取していたという事実が発覚し、Xは非行事実及び損害額を調査していたところ、Aに反省の態度が見られなかった。そこでXは、平成10年10月15日、Aに対し、事実を明らかにしなければ懲戒解雇にするとの意向を示し、さらに同年12月14日、同年10月15日付解雇を理由とする離職票を交付し、もって即時解雇の意思表示をした。Xは、同年11月11日、Y(上野労働基準監督署長)に対し、Aについての解雇予告除外事由の認定の申請をしたが、Yは、これに対し、12月4日付で解雇予告除外不認定処分をした。そこで、Xは、解雇予告除外不認定処分の取消を求める請求を行った。


[判決の要旨]
解雇予告除外事由の認定の制度は、解雇予告除外事由の存否に関する使用者の恣意的な判断を抑止するという、行政取締り上の見地から、使用者に対して解雇予告除外事由に該当する事実の存在についての行政官庁の認識の表示を受けるべきものとしたものであって、その認識の表示自体に直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することを認めているのではないと解される。したがって、解雇の効力は行政官庁による解雇予告除外事由に関する労働基準法20条3項、19条2項の認定の有無・内容にかかわりなく、専ら同法20条1項ただし書の定める客観的な解雇予告除外事由の存否によって決せられ、使用者は、不認定行為を受けた場合であっても有効に即時解雇をすることを妨げられず、反対に認定行為を受けた場合であっても、客観的に見て解雇予告除外事由が存在しないときは、即時解雇を有効なものとすることはできないこととなるものであり、そうとすれば、行政官庁による解雇予告除外事由の認定の有無・内容は使用者の雇用契約上の地位に何らの影響を及ぼすものではないこととなる。以上によれば、本件行為は抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為ということはできないから、Xの本件訴えは不適法というべきである。