読売新聞社事件(労働契約に伴う権利義務・就労請求権)

読売新聞社事件(東京高裁昭和33年8月2日決定)
「労働者の就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合又は業務の性質上労働者が労務の提供について特別の合理的な利益を有する場合を除いて、一般的には労働者は就労請求権を有するものでないとされた。」


[事実の概要]
Xは、昭和30年4月1日より新聞業を営むY社に雇用され、見習社員として勤務していたが、見習期間満了の日である同年9月30日、Xは、就業規則103条3項の「やむを得ない会社の都合によるとき」という理由により解雇された。 Xは、Yがなした解雇の意思表示は就業規則の適用を誤ったもので無効であると主張し、解雇の意思表示の効力停止の仮処分、賃金の支払いの仮処分及び就労妨害排除の仮処分を求めた。1審決定は、解雇の意思表示の効力停止の仮処分及び賃金の支払いの仮処分を認容したが、就労妨害排除請求については申請を却下したため、これを不服としてXが抗告を行った。


[判決の要旨]
労働契約においては、労働者は使用者の指揮命令に従つて一定の労務を提供する義務を負担し、使用者はこれに対して一定の賃金を支払う義務を負担するのが、その最も基本的な法律関係であるから、労働者の就労請求権について労働契約等に特別の定めがある場合又は業務の性質上労働者が労務の提供について特別の合理的な利益を有する場合を除いて、一般的には労働者は就労請求権を有するものでないと解するのを相当とする。本件においては、Xに就労請求権があるものと認めなければならないような特段の事情はこれを肯認するに足るなんの主張も疎明もない。のみならず、裁判所が労働者の就労に対する使用者側の妨害を禁止する仮処分命令を発しうるためには、その被保全権利の存在のほかに、かかる仮処分の必要性が肯定されなければならないわけであるが、本件仮処分においては、冒頭認定のとおり、YのなしたXに対する解雇の意思表示の効力の停止と賃金の支払を求める限度においてXの申請は認容されたものであるから、Xは特段の事情のない限り、それ以上進んで就労の妨害禁止まで求め労働者としての全面的な仮の地位までも保全する必要はないものといわなければならない。