セキレイ事件(解雇予告)

セキレイ事件(東京地裁平成4年1月21日判決)
「使用者が解雇予告手当を支払うことなく即時解雇の意思表示をし、労働者が雇用関係の即時終了を容認し解雇予告手当の支払を求めている場合には、労働者の意思表示によって雇用関係は即時に終了し、使用者は労働者に対して解雇予告手当を支払うべき義務が生じるとした。」


[事案の概要]
Xは、平成2年5月からYに入社した労働者であるが、Yの主張によれば、入社後まもなく社内や社外においてYの経営につき非難中傷をし、さらにYと無縁の暖炉やログハウスをYの見込み客に売り込み、また、顧客からの入金分の横領等の背任行為を行ったことから、Yは、同年7月21日に、解雇予告手当を支払うことなくXを即日解雇したものである。


[判決の要旨]
Xは、平成2年7月11日に、会社の上司から「おまえは首だ」といわれたことが認められ、Xは同日Y主張趣旨に沿う内容の書面を会社に提出していることが認められる。そして右事実からすれば、右上司による意思表示は、Y主張の事実を理由とする懲戒解雇の意思表示であったことが認められる。しかしながら、Xは、書面を作成する直前に、Yの専務や部長等数人から殴る蹴るの暴行を受け、〈中略〉全治10日の傷害を負わせられたうえ、右趣旨の内容の書面を書かなければ帰さないと言われたためにやむを得ず意に反して作成したものであることが認められ、右事実からすると、右書面の内容には信用性がなく、他にY主張の懲戒事由の存在を立証する証拠はない。そうであるとすれば、Yに懲戒解雇権が発生しているとは認められず、したがって、Yの懲戒解雇の意思表示は無効であり、これを通常解雇の意思表示と見るにしても、解雇予告手当の支払がない以上解雇の効力は生じないことになるが、Yにおいて雇用関係を即時に終了させる旨の意思を有していたことは明らかであるとともに、Xにおいても雇用関係の即時終了の効力が生じること自体は容認し、解雇予告手当の支払を求めているものであるから、右意思表示によってXとYとの間の雇用関係は即時に終了し、YはXに対し解雇予告手当を支払うべき義務が生じるものと解するのが相当である。