藤島建設事件(労基法の労働者以外の者)

藤島建設事件(浦和地裁平成8年3月22日判決)
「大工と住宅建築業者間の契約関係について、典型的な雇用契約関係ではないが、典型的な請負契約関係であったともいえず、請負契約の色彩の強い契約関係であり実質的な使用従属関係があったので、住宅建築業者は使用者と同様の安全配慮義務を負うとした。」


[事案の概要]
Y会社は、注文住宅及び分譲住宅の建築及び販売を業として営業をしていた。Yは、一棟の木造住宅の建築について、Yのみで工事を完成させることはなく、必要な各種工事を外の業者に注文しており、少なくとも20を超える業者が工事に関与していた。そして、木工事に携わる従業員は、補修工事等のサービス業務に従事するものを除くと、Yには存在しなかった。Xは、店舗も工場もない大工であって、いわゆる「一人親方」と呼ばれており、従業員はいなかった。Xは、昭和54年頃から、Yが請け負った木造建築工事のうちの木工事に従事するようになり、年間3ないし5棟の木工事の注文を受けてこれに従事し、他の業者の注文に応じることはなく、Yの注文に応じた木工事を他の業者に発注することもなかった。ただし、Xは、Yの注文に応じない自由もあり、現に、工事現場が遠距離であることから注文に応じなかったこともある。Xは、Yから、現に行っている木工事が終了する1ヶ月前から直前までの間に、次の木工事について、立面図、平面図、仕様書等の書類を交付されるとともに、着工及び完成の各時期を口頭で指定されていた。そして、Xは、構造図を作成し、Yから必要な材料(Xに交付される仕様書に記載されているものであって、Xが材質、等級等を選択することはできなかった。)を提供され、Yの作業所において、同所に備付けの機械を用いて材料の加工(刻み)をし、加工の終了した材料は材料をYに納入した材木業者が工事現場に搬入していた。現場における材料の管理は、Yが行っていた。工事現場の近隣住民に対する配慮等もあって、Yから、現場における作業時間は午前8時から午後6時までの間と定められ、日曜日及び祭日における作業は原則として禁止されていた。Xは、通常使用する簡単な道具(のこぎり、丸のこ、かなづちなど)は持っていたが、作業に必要なくぎその他の金物類については、Yから提供されていた。また、作業のための足場その他安全設備の設置については、Yが手配をしていた。工事の進行や安全の管理については、Yが現場監督を派遣しており、現場監督は、おおむね2、3日に一度の割合で現場を訪れ、Xに対し、工事の進行等につき指示をしていた。報酬の支払については、建物の種類、工事の難易度等を考慮して坪単位で決定されていた。Xは、Yに対し、毎月25日に報酬の支払を請求し、Yは、工事の進行状況を確認の上、Xに対し、請求のあった月の翌月の5日に報酬の支払をしていた。Xは、Yから賞与の支払を受けたことがなく、また、所得の申告については独自にいわゆる白色申告をしていた。Yは、Xを含む協力業者(納入業者、大工等)との間の親睦を図るとともに、事故防止等を目的として、昭和59年頃、Y及び協力業者を会員とするA会(権利能力なき社団)を設立していた。A会は、安全教育、災害補償などを主たる活動内容としており、毎年、労働災害の防止のための大会を開き、労働基準監督署係官や保険会社社員による講演会を実施するなどして、協力業者に対し、安全教育を施していた。Xも、原則として、毎年、右安全大会に出席していた。なお、A会は、その会員で希望する業者のために、保険会社との間で、災害補償保険契約を締結していた。Xは、平成2年2月5日に作業中に負傷したことにより障害を負うに至ったため、Yに対し、安全配慮義務違反を理由に損害賠償を請求した。


[判決の要旨]
(一)に認定した事実関係〈事案の概要参照〉を総合すると、XY間の契約関係は、典型的な雇用契約関係であったとは到底認め難く、また、典型的な請負契約関係であったともいえないが、請負契約の色彩の強い契約関係であったとみるべきところ、それにもかかわらず、XY間には、実質的な使用従属関係があったというべきであるから、Yは、本件事故の当時、Xに対し、使用者と同様の安全配慮義務(労働者が労務を提供する過程において生じる危険を防止し、労働者の生命、身体、健康等を害しないよう配慮すべき義務)を負っていたと解するのが相当である。