トーコロ事件(解雇・不法行為)

トーコロ事件(東京地裁平成6年10月25日判決)
「本件解雇は無効であるが、解雇に至った経緯等からすると労働者の受けた精神的苦痛は雇用契約上の地位の確認等によって慰謝されるべき性質のものであり、本件解雇を不法行為あるいは債務不履行に当たるとして慰謝料の支払いを求めることはできないとした。」

[事案の概要]
Yと「会員相互の親睦と生活の向上、福利の増進を計り、融和団結の実をあげる」ことを目的とする親睦団体(友の会)の代表者であるAとの間で36協定が結ばれていた。Yが、これに基づいて残業命令を行ったところ、Xは拒否した。Yはこのことを理由にXを解雇した。


[判決の要旨]
Yの残業延長要請及び本件残業命令が適法になされたものであるかどうかについてみると、〈中略〉本件36協定は、親睦団体の代表者が自動的に労働者代表となって締結されたものというほかなく、作成手続において適法・有効なものとはいいがたい。そうすると、本件36協定が無効である以上、Xに時間外労働をする義務はなく、Xが残業を拒否し、あるいは残業を中止すべき旨の主張をしたからといって、懲戒解雇事由に当たるとすることはできない。YのXに対する本件解雇は、普通解雇であるとしても、解雇事由が存しないか、あるいは解雇権の濫用に当たるものとして無効というべきである。しかし、本件解雇に至った経過を見ると、Xは、平成3年11月8日ごろの中途採用者研修や、同月9日の激励会において、繁忙期間中の有給休暇取得問題に関し、A総務部長を公然と非難し、その後、人事考課の自己評価を拒否し、Yの上層部に秘密で本件手紙〈Yにおいて不法な残業が行われていること等を訴える手紙〉を配布し、本件手紙の配布問題についてA総務部長に謝罪を申し入れる文書を交付し、なおこの間、友の会を通じた話し合いも拒否するなど、その残業中止等の労働条件改善要求はあまりに性急であり、必ずしも職場の同僚や上司の理解・共感を得られたとはいえないこと、Yは、本件解雇後、仮処分命令に従って賃金仮払いに応じてきていること、XがYに勤務し始めてから本件解雇に至るまでの期間は8ヶ月に満たないこと、Xは独身であること等諸般の事情からすると、Xの受けた精神的苦痛は、Xについて雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認し、かつYに大して賃金の支払を命ずることによって慰謝されるべき性質のものであると認められるから、本件解雇を不法行為あるいは債務不履行に当たるとして慰謝料の支払を求めるXの請求は、理由がないというべきである。