大石塗装・鹿島建設事件(使用者と親会社・元請負人)

大石塗装・鹿島建設事件(福岡高裁昭和51年7月14日判決)
「請負人の被用者たる労働者と注文者との間に、実質上、使用者・被使用者の関係と同視できるような経済的・社会的関係が認められる場合には、注文者は請負人の雇傭契約上の安全保証義務と同一内容の義務を負担するとした。」


[事案の概要]
亡Aは訴外B社工場塗装工事現場において鉄骨塗装作業に従事中、地上に墜落して即死した。Aの父母であるX1、X2及びAの弟妹であるX3ないしX7は、Aを雇用していたY1社と、塗装工事をB社から請負いY1社に下請けしていたY2社に対して、Aの死亡に関し債務不履行若しくは不法行為に基づく損害賠償を請求した。1審は、Y1社が雇用契約の内容として、Y2社にはY1社との下請契約の内容として、それぞれAに対する安全保証義務を負うことを認めたが、Aが命綱を自ら外していたと推知されることから、Aの墜落はもっぱらAの過失に起因するとして、Y1社及びY2社の責任を否定し、X1ないしX7の請求を棄却した。


[判決の要旨]
労働者が、法形式としては請負人(下請負人)と雇傭契約を締結したにすぎず、注文者(元請負人)とは直接の雇傭契約を締結したものではないとしても、注文者、請負人間の請負契約を媒介として事実上、注文者から、作業につき、場所、設備、器具類の提供を受け、且つ注文者から直接指揮監督を受け、請負人が組織的、外形的に注文者の一部門の如き密接な関係を有し、請負人の工事実施については両者が共同してその安全管理に当り、請負人の労働者の安全確保のためには、注文者の協力並びに指揮監督が不可欠と考えられ、実質上請負人の被用者たる労働者と注文者との間に、使用者、被使用者の関係と同視できるような経済的、社会的関係が認められる場合には注文者は請負人の雇傭契約上の安全保証義務と同一内容の義務を負担するものと考えるのが相当である。認定の事実によれば、Y2社とAとの間には直接の雇傭契約関係は存在しないが、Y1社との下請契約を媒介とし、右Y1社の請け負い工事全般に亘って、その工程を管理し、工事の進捗状況も十分に把握して工事の段階に応じ、工事および安全について指示や指揮、命令できる立場にあるのであるから、Y2社はY1社の塗装工に対し使用者と同視しうる関係にあるというべく、そうであれば右Y2社はその契約の内容としても自らは雇傭契約を締結していないAらに対しても、高所における鉄骨塗装工事に伴う労働災害に対する安全保証義務を負担するものといわねばならない。※ 本判決に対する上告審(最高裁昭和55年12月18日第一小法廷判決)では、Y1社及びY2社がAに対して安全保証義務を負うことについては争われなかった。