山崎証券事件(労基法の労働者以外の者)

山崎証券事件(最高裁昭和36年5月25日第一小法廷判決)
「証券業者と外務員間の契約により、外務員が業者の顧客から株式その他の有価証券の売買等の注文を受けた場合、これを業者に通じて売買その他の有価証券取引を成立させるいわゆる外務行為に従事すべき義務を負担し、業者がこれに対する報酬として出来高に応じ賃金を支払うこと及び外務員による有価証券の売買委託を受理すべき義務を負担しているときは、業者による契約解除につき労働基準法第20条の適用はないとした。」


[事案の概要]
A証券株式会社は有価証券の売買取引を業とする会社であり、Xは、従来A証券株式会社との間に存した外務員契約に基き、昭和30年7月18日頃まで、同会社の外務員として、その顧客から株式その他の有価証券の売買、その委託の媒介取次又はその代理の注文を受けた場合、Y会社を通じて売買その他の証券取引を成立させるいわゆる外務行為に従事していた。その後、A証券株式会社は、昭和33年7月25日にY会社に吸収合併された。Xは、Y昭和30年7月20日以降Xによる株式その他の売買の委託の申入を受理しなくなったため、Yに対して、YがXによる株式等有価証券の委託申入を受理するまで、Xに1か月につき2万円を支払うよう求めた。これに対し、原判決が、本契約を民法上の期間の定めのない雇傭契約であるとした上で、解雇の意思表示をしたと認められる日から2週間を経過した日において、本件契約が終了したものとしたところ、Xは、労働基準法第20条を指摘した上で、原判決が法律の解釈を誤った又は証拠によらずに判断したこと、かつ、Yは解雇の意思表示をしていないことを主張し、XとYとの間には依然として雇傭契約が存在するものとして上告した。


[判決の要旨]
原判示によれば、有価証券の売買取引を業とするA証券株式会社とXとの間に成立した外務員契約において、Xは外務員として、右会社の顧客から株式その他の有価証券の売買又はその委託の媒介、取次又はその代理の注文を受けた場合、これを右会社に通じて売買その他の証券取引を成立させるいわゆる外務行為に従事すべき義務を負担し、右会社はこれに対する報酬として出来高に応じて賃銀を支払う義務あると同時にXがなした有価証券の売買委託を受理すべき義務を負担していたものであり、右契約には期間の定めがなかつたというのであるから、右契約は内容上雇傭契約ではなく、委任若しくは委任類似の契約であり、少くとも労働基準法の適用さるべき性質のものではないと解するを相当とする(原判決はこれを雇傭契約と言つているが、右は単にその法律見解を述べたに過ぎないものと解すべきである)。果してそうだとすれば、右契約が労働基準法20条の適用下にありとしその前提に立つて種々論議する所論は採用の余地なきものと言わざるを得ない。