NHK西東京営業センター(受信料集金等受託者)事件(労基法の労働者以外の者)

NHK西東京営業センター(受信料集金等受託者)事件(東京高裁平成15年8月27日判決)
「公共放送機関と受信料集金等受託者間の契約について、就業規則の定めがないこと、業務の遂行義務が労働契約にみられるような広範なものでないこと、業務遂行の具体的方法は自由裁量に委ねられていること、業務の代替性が認められていること、報酬の算出方法が出来高払方式であり、税法上の区分も事業所得として確定申告されていること等から、使用従属関係を認めることは困難な委任と請負の性格を併せ持つ混合契約としての性格を有するとした。」


[事案の概要]
Yは、放送法に基づき昭和25年に設立された公共放送機関であり、全国各地に居住する受信者が直接拠出する受信料をほぼ唯一の財源として運営されている。Yは、放送法及び受信規約に基づく受信契約の取次業務及び受信料の集金業務を部外者である受託者に委託する方法を採用してきている。Xは、昭和60年3月に、Yとの間で同年8月までを契約期間とし、放送受信契約の取次、放送受信料の集金業務等を受託する内容の委託契約を締結し、その後、同年8月、昭和63年6月、平成3年4月、平成6年6月に契約を更新した。受託業務は、受持区域内の受信料の集金、受信契約の取次ぎ、これに関連する付随的な事務処理(Yの事業のPR、パンフレットの配布、視聴者の意向吸収等)に限られており、付随的業務もYが業務命令のように一方的な指示によって実施できる性質のものではなく、受託者との話合いによる合意の上で実施されていた。業務遂行の具体的方法としては、受託者は、受託業務の遂行に当たり、訪問日時、従事場所、巡回方法につき自己の自由裁量により計画立案を行っていたが、業務に必要な領収証等の事務手続的な事項や、受信料の金融機関への入金方法等に関しては、画一的な処理を求められていた。受託者は、兼業が自由であり、受託した業務の遂行自体の全部又は一部をYへの通知のみで再委託により他の代替させることも認められている。受託業務遂行の従事場所は、委託者の自由裁量に委ねられており、また、受託業務に従事する日数ないし時間も受持区域の広狭、受持数の多寡、あるいは再受託者がある場合にはその比率、口座利用率、訪問集金の前払利用率などによって、個人的に大きく異なっており、個別の事情に応じた取扱いがなされている。受託者には、事務処理手数料の名目で報酬が支払われており、月間の受信契約取次件数、受信料収納枚数等に応じた定額部分と、1件当たりの手数料に出来高を乗じて計算される部分から構成されており、いずれも業績に応じて算定される。また、受託者の報酬収入の税法上の所得区分は、所得税法上は事業所得として扱われ、各人が毎年確定申告手続を踏んでいた。Yが明確に労働契約を締結している一般の職員については、職員就業規則が定められているほか、採用から退職に至るまで受託者とは全く別の取扱いがされている。また、労働契約が締結されているのであれば、通常就業規則が定められ、社会保険料の徴収等がされるが、Xら受託者についてはそのような措置は一切採られていなかった。Xは、YがXに対して平成7年4月5日付でした解雇が無効であることの確認等を求めた。


[判決の要旨]
Xのように、Yと受信料の集金業務及び受信契約の取次業務に関する委託契約を締結した受託者は、受託業務締結及びその業務執行に当たり、一定の画一的処理を強いられる上、業績確保のために収納業務及び取次業務について受託者が達成すべき目標値を設定され、その目標の達成を求められ、その実行を高めるために業務内容について週間報告等の形で達成度の報告を要求され、業績確保の程度に応じて委託者たるYから段階的に指導、助言を受けるなどしており、受持件数のいかんにもよるが受託業務の遂行には相当な労力を要することが認められる。しかし、受託業務の画一的処理の要請、Yの上記指示・指導あるいは要求の内容は、委託業務が放送法及び受信規約に基づくものであり、かつ、Yの事業規模が全国にわたる広範囲に分布する視聴者からの公的料金の確保という性質上必要かつ合理的なものと認められる性質のものであり、委託契約の締結から業務遂行の過程に仮にXら受託者の自由な意思が及ばない部分があるとしても(もっとも、Xら受託者はこれらのことを承知の上で委託契約の締結に及んでいることが認められる。)、このような契約の一側面のみを取り上げることによって労働契約性を基礎づける使用従属関係があるものと速断することは相当とはいい難い。加えて、前記認定のとおり、本件委託契約においては、使用従属関係を規律する根本規範ともいうべき就業規則の定めはなく、受託業務は契約により限定されており、受託業務の遂行義務は少なくとも労働契約にみられるような広範な労務提供義務とは全く異質のものであること、業務遂行時間、場所、方法等業務遂行の具体的方法はすべて受託者の自由裁量に委ねられている上、業務は自由であるし、受託業務自体を他に再委託する等の業務の代替性も認められている(再委託の実績は前記認定のとおりであり、数量的な評価は分かれる余地があるとしても、再委託が是認され、かつ、その実績があるという事実自体が労働契約性を否定する一つの要素である。)のであり、労働時間、就業場所、就業方法等が定められている労働契約とはおよそ異質であること、報酬は事務費の名目で支払われているが、その算出方法は要するに出来高払方式であって、受託業務の対価とみるのが相当であって、一定時間の労務提供の対価である賃金とは質的に異なっており、これを反映して報酬の税法上の区分も事業所得とされており、受託者らはそれに従い、経費控除をした上で事業所得として確定申告をしている等契約の重要かつ本質的部分にわたって労働契約とはおよそ相入れない異質の諸事情が多々認められるのである。なお、業務用備品の返還義務などは契約の特質を左右するような本質的な要素ではない。そうしてみると、労働契約性の判断基準を使用従属関係の有無に求めるというXの基本的考え方自体の当否をさておき、その考えに立った場合であっても、本件委託契約についてXとYとの間に使用従属関係を認めることは困難であるというべきであり、むしろ上記認定によると、強いて本件委託契約の法的性質をいえば、委任と請負の性格を併せ持つ混合契約としての性格を有するものと理解するのが実態に即した合理的な判断というべきである。