モーブッサン・ ジャパン事件(有期労働契約・民法第628条やむを得ない事由)

モーブッサン・ ジャパン事件(東京地裁平成15年4月28日判決)
「有期労働契約の契約期間中において、いつでも30日前の書面による予告の上、本件契約を終了することができる旨の記載をした労働契約書により契約を締結した者に対する契約期間中の解雇について、解雇の理由がやむを得ない事由(民法第628条)に当たるとは認められないため無効とした。」


[事案の概要]
宝石等の輸出入、卸売及び小売等を営むY社はXとの間に、「(1)Y社はXを契約部外エグゼクティブとして雇う。(2)Xは契約の全期間を通じてY社の東京事務所を本拠として専門的な業務を遂行する。(3)Xの地位をマーケティング・コンサルタントとする。(4)XとY社は、本件契約の期間中、いつでも30日前の書面による予告のうえ、本件契約を終了することができる。(5)本件契約書に規定されていない一切の事項は、Y社の就業規則及び日本の法律に従って決定する。(6)本件契約は、平成11年10月16日に発効し、平成12年4月15日に自動終了する。」等が記載された英文の契約書により、契約を締結した。なお、本件契約書中の(7)「At least 30 days before the hereabove mentioned termination date, Y may propose you another contract.」との文章には、XとY社で解釈に争いがある。その後Y社は、契約期間中であった平成11年11月18日にXに対し、同年12月18日をもって契約を終了する旨書面により通知した。これに対してXが、労働契約上の地位確認、労働契約に基づく賃金の支払等を求めて出訴した。


[判決の要旨]
<Xが労働時間の管理を受けていないなど、Xの労働者性を疑わせるいくつかの事情があるが、他方で>XとY社は指揮監督関係にありXが個々の仕事に対して諾否の自由を有していたとはいえないこと、就業規則や労基法の適用対象とすることが予定されていたこと、専属性の程度が高かったことなどを総合すると、Xは、Y社との間の使用従属関係のもとで労務を提供していたと認めるのが相当であり、本件契約は、労働契約としての性質を有するものと認められる。<契約関係の継続(更新)の有無について、>この英文の規定<(上記(7))>は、Y社は契約終了日の30日前までに他の契約を提案することができることを意味するものと解され、X主張のように契約の提案をY社に義務付けたものと解することはできない。実質的にも、このように解しないと、契約期間を定めた意味がなくなり不合理である。また、Xは、既に他社に再就職しているから<中略>、Y社に復帰する意思がないことは明らかである。したがって、XのY社に対する労働契約上の地位確認請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。<Y社は、Xの在庫管理に誤りがある、XがY社に対して私用電話の料金を支払うよう不正に請求したとしてXを解雇したとしているが、証拠等によれば、>Y社はXが在庫表や販売予算を提出するよりも以前に本件契約の解除を決定したと疑わざるを得ない。また、XがY社に精算を求めた私用電話は、金額がさほど多額とはいえないうえ、Xは精算を受けていない。そうすると、Xが作成した在庫表と販売予算に多数の誤りがあったことや、通話料金の一部を不正に請求したことは、本件解雇を根拠付けるやむを得ない事由(民法628条)に当たるとは認められないから、本件解雇は無効である。