川崎製鉄事件(出向・要件)

川崎製鉄事件(神戸地裁平成12年1月28日判決)
「業務上の必要があるときには出向を命ずることができる旨の規定があり、細則を定めた出向協定が存在し、過去十数年にわたって従業員が出向命令に服しており、さらに、労働組合による出向の了承もあった。」


[事案の概要]
Xは、昭和44年、鉄鋼メーカーであるYに入社し、神戸工場で整備課等において勤務後、関連会社Aに出向したが、勤務場所は神戸工場のままであった。その後、Yは、神戸工場の閉鎖を決定し、これに伴いAが同工場から撤退し西宮地区に集約されたため、Xは、西宮へ異動するか否かの打診を受けたがこれを拒否したため、平成7年11月にAからYに戻った。平成8年2月1日、XはYからBへの出向を命ぜられ、Xは、これに対して異議を留めた上で、Bにおいて勤務している。なお、Bは、緑化、清掃、弁当配達を業とする会社で、同年にY及びYのグループ会社が出資して設立したものである。


[判決の要旨]
本件出向のように、就業規則や労働協約において、業務上の必要があるときには出向を命ずることができる旨の規定があり、それらを受けて細則を定めた出向協定が存在し、しかも過去十数年にわたって相当数のY従業員らが出向命令に服しており、さらにXらの属する労働組合による出向了承の機関決定もが存在する場合には、出向を命ずることが当該労働者との関係において、次のような人事権の濫用にわたると見うる事情がない限り、当該出向は法律上の正当性を具備する有効なものというべきである。使用者が出向を命ずる場合は、出向について相当の業務上の必要性がなければならないのはもちろん、出向先の労働条件が通勤事情等をも付随的に考慮して出向元のそれに比べて著しく劣悪なものとなるか否か、対象者の人選が合理性を有し妥当なものであるか否か、出向の際の手続に関する労使間の協定が遵守されているか否か等の諸点を総合考慮して、出向命令が人事権の濫用に当たると解されるときには、当該出向命令は無効というべきところ、前記で認定した事実のもとでは、本件出向命令には、<中略>右の権利濫用事由を認めるに足りない。