中田建材事件(募集の際の労働条件と実際の労働条件の相違)

中田建材事件(東京地裁平成12年3月22日判決)
「会社が面接の際に、公共職業安定所に掲示した求人票とは異なる内容の雇用条件を提示して労働者との間で雇用契約を締結したからといって、そのことから直ちに会社に詐欺が成立するということはできないとされた。」


[事案の概要]
Xは、公共職業安定所において、基本給35万円から45万円等と記載されていた会社Y1の求人票を見て、Y1に応募し、採用面接を受けた。Xは、採用面接時において、Y1の社会保険労務士Y2から「施工管理責任者として能力があるなら年間580万円を支払ってもよい」と述べられ、能力確認のため3か月の試用期間が設けて、雇い入れられた。Y1は、Xが施工管理責任者としての能力が欠如しているとして、更に工事担当従業員として能力確認のため、試用期間を3か月延長した。その後、Xは、Y1と工事担当従業員としての雇用通知書を取り交わしたが、基本給料は月額22万5千円となっていた。Xは、1年間の賃金を580万円とする合意がなされているにもかかわらず、その額が支払われなかったとして、債務不履行責任に基づく損害賠償の支払、仮に合意が認められないとしても、求人票と異なる雇用契約を締結させ、試用期間を延長したことなどが詐欺に当たるとして、不法行為責任に基づく損害賠償の支払を請求した。


[判決の要旨]
Xが、平成9年11月21日ころに行われた面接の際に、A〈(Y1の専務取締役)〉及びY2の立会いの下に、Y会社代表者との間で合意したのは、Xが現場の施工管理責任者としての能力があれば、1年間のXの賃金を金580万円とするということにすぎないのであり、Y会社がXを実際に働かせてみたところ、Xには現場の施行管理責任者として能力がないことが判明したので、Y会社はXを現場の施工管理責任者ではなく工事担当の従業員として雇うことにしたというのであり、XがY会社との間で取り交わした2通の雇用通知書はいずれもXを工事担当の従業員として雇うという内容にすぎないのであって、以上の事実によれば、XとY会社との間で残業代を除いた1年間のXの賃金を金580万円とするという合意(本件合意)が成立したことを認めることはできない。 少なくとも本件においてY会社が公共職業安定所に掲示した求人票は雇用契約の申込みの意思表示ではなく、労働者による雇用契約の申込みの誘引にすぎないというべきであるから、Y会社がXとの面接の際にY会社が公共職業安定所に掲示した求人票とは異なる内容の雇用条件を提示してXとの間で雇用契約を締結したからといって、そのことから直ちにY会社に詐欺が成立するということはできない。