新日本製鐵(三島光産)事件(出向・要件)

新日本製鐵(三島光産)事件(福岡高裁平成12年2月16日判決)
「業務上の必要がある場合には社外勤務させることがある旨就業規則上に規定されており、出向期間その他出向者の処遇等を定めた社外勤務協定が労働組合との間に締結されていた。」


[事案の概要]
Xは、昭和36年にY社に入社し、主に構内輸送業務に従事していたが、当該業務がYからA社に委託されたことに伴い、昭和63年5月にAへの出向を命ぜられた。大部分の組合員は出向に同意したが、Xは出向命令に同意しなかった。しかしYは組合との協議・了解を得て本件出向命令を発令し、Xは異議をとどめながらこれに従いAで就労していた。その後、出向期間(3年)は3回延長された。


[判決の要旨]
出向(在籍出向)においては、出向者と出向元会社との間の労働契約は維持されているものの、労務提供の相手方が変わり、労働条件や生活関係等に不利益が生じる可能性があるので、出向を命じるためには、これらの点の配慮を要し、当該労働者の承諾その他これを法律上正当付ける特段の根拠が必要であると解すべきである。本件においては、Xが昭和36年に入社した当時の就業規則には、業務上の必要により従業員を社外勤務させることがある旨規定されており、Xはこの就業規則を遵守する旨の誓約書を提出した上、昭和44年9月にYと連合会との間で出向期間その他出向者の処遇等を定めた社外勤務協定が締結され、労働協約本文は次期改訂時に改訂することとされ、昭和48年4月に労働協約においても、業務上の必要により組合員を社外勤務させることがある、社外勤務に関しては別に協定する旨規定されるに至り、本件出向命令当時、右内容の就業規則、労働協約、社外勤務協定(その法的性質は、協定内容、当事者、形式等から、労働協約であると解される。)の各規定が存したこと、社外勤務協定によれば、出向者の処遇等については、Yの従業員と比べて特に不利益を受けないよう配慮されていること、Yにおいては、昭和45年ころから、各種業務を分離独立させた会社や関連会社、協力会社等に委託するようになり、以後本件出向命令に至るまで、業務委託に伴う出向及び出向期間の延長の事例が相当数に及んでいたこと、この間労働組合は、該当する職場の労働者の個別の意見に配慮しつつ、出向の必要性、出向後の労働条件等についてYと協議し、労働組合の了解の下に多くの出向が実施された経緯があることなどにかんがみれば、Yは、右各規定を根拠として、本件のような協力会社への業務委託に伴う出向についても、その必要性があり、出向者に労働条件や生活環境の上で格別の不利益がなく、適切な人選が行われるなど合理的な方法で行われる限り、出向者の個別具体的な同意がなくても従業員に対し出向を命じることを法律上正当化する特段の根拠があると認めるのが相当である。