デイエフアイ西友事件(降格)

デイエフアイ西友事件(東京地裁平成9年1月24日決定)
「配転と賃金とは別個の問題であって、使用者は、より低額な賃金が相当であるような職種への配転を命じた場合であっても、特段の事情のない限り、賃金については従前のままとすべき契約上の義務を負っているとした。」


[事案の概要]
Yは、平成7年5月に、採用後3か月間を試用期間とし、当初の賃金額を年俸730万円とする雇用契約を、平成7年にXとの間で結んだ。試用期間経過後の時点において、Xの賃金額は、年俸784万7500円であった。Yは、Xが業務成績不良であったため、平成8年6月に、Xに対し、当初の契約内容であるバイヤーとは異なる職種であるスタッフ(バイヤーのアシスタント)への配転を命じ、この配転に伴って、同年7月から、配転後の職種の他の従業員と同等の賃金額に減額した。


[判決の要旨]
一般に、労働者の賃金額は、当初の労働契約及びその後の昇給の合意等の契約の拘束力によって、使用者・債務者〈ママ〉とも相互に拘束されるのであるから、労働者の同意がある場合、懲戒処分として減給処分がなされる場合その他特段の事情がない限り、使用者において一方的に賃金額を減額することは許されない。ところで、本件において、Yが一方的措置としてXの賃金額を減額したことについては、当事者間に争いがない。この賃金の一方的な減額を正当化する根拠として、Yは、経営者としての裁量権の行使として賃金額減額をすることができる旨を主張する。しかしながら、経営者としての裁量権のみでは、一方的な賃金減額の法的根拠とならない。他方、Yは、Xが業務成績不良であるため、Yに対し、当初の契約内容とは異なる職種への配転を命じ、この配転に伴って、配転後の職種の他の従業員と同等の賃金額に減額したものである旨を主張する。たしかに、配転については、原則として、経営者の裁量権が尊重されるべきであり、労働者は、具体的な職務内容を求めることのできる具体的な請求権を有しないと解するべきである。しかしながら、配転と賃金とは別個の問題であって、法的には相互に関連しておらず、労働者が使用者からの配転命令に従わなくてはならないということが直ちに賃金減額処分に服しなければならないということを意味するものではない。使用者は、より低額な賃金が相当であるような職種への配転を命じた場合であっても、特段の事情のない限り、賃金については従前のままとすべき契約上の義務を負っているのである。したがって、本件においても、YからXに対する配転命令があったということも契約上の賃金を一方的に減額するための法的根拠とはならない。