京都セクシュアル・ハラスメント事件(職場環境配慮義務)

京都セクシュアル・ハラスメント事件(京都地裁平成9年4月17日判決)
「会社は、雇用契約に付随して、労働者のプライバシーが侵害されることがないように、また、労働者がその意に反して退職することがないように、職場の環境を整える義務があるとされ、使用者の損害賠償責任を認めた。」


[事実の概要]
Y会社は、呉服の販売等を業とする会社であり、Xは、平成3年2月21日から、正社員としてY会社で勤務していた女性である。Y1はY会社の代表取締役、Y2はY1の親族であってY会社の取締役であり、AはY会社の社員であった。Xは、平成7年12月5日、Y会社を退職したが、Y会社にはXが安心して働けるように職場の環境を整える義務があるにもかかわらず、Y会社内女子更衣室においてAによる隠し撮りが行われていたことに適切に対処しなかったこと、Y2が朝礼時にXの名誉を毀損する発言をしたこと、また、Xを退職させるための発言をしたことは、Y1、Y2の不法行為に当たるとともに、Y会社の債務不履行及び不法行為にも当たるとして、損害賠償の請求をした。


[判決の要旨]
Y会社は、雇用契約に付随して、Xのプライバシーが侵害されることがないように職場の環境を整える義務があるというべきである。そして、前記で認定したとおり、Y会社は、Y会社の女子更衣室でビデオ撮影されていることに気付いたのであるから、Y会社は何人がビデオ撮影したかなどの真相を解明する努力をして、再び同じようなことがないようにする義務があったというべきである。それにもかかわらず、前記で認定したとおり、Y会社は、ビデオカメラの向きを逆さにしただけで、ビデオカメラが撤去されると、その後、何の措置も取らなかったため、再び女子更衣室でビデオ撮影される事態になったのであるから、Y会社は、債務不履行により、平成7年6月ころに気付いた以降のビデオ撮影によって生じたXの損害を賠償する責任を負う。なお、平成7年6月ころ以前に女子更衣室の壁に穴が開いていたことを認めるに足りる証拠はないから、Y会社は、同月ころに気付く以前のビデオ撮影については、責任を負わない(穴のあいたダンボール箱がおいてあるだけでは民法717条の責任を負わない。)。前記で認定したとおり、Y会社の取締役であるY2が、朝礼において、本件発言<XがAと男女の関係にあるかのような発言。これによりXの名誉は毀損されたと認定されている。>をしているから、Y会社は、民法715条により、本件Y2発言によって生じたXの損害を賠償する責任を負う。Y会社は、雇用契約に付随して、Xがその意に反して退職することがないように職場の環境を整える義務があるというべきである。そして、前記で認定したとおり、本件Y2発言<Xに対して退職を示唆するような発言>によって、社員がXとの関わり合いを避けるような態度をとるようになり、人間関係がぎくしゃくするようになったので、XがY会社に居づらい環境になっていたのであるから、Y会社は、Xが退職以外に選択の余地のない状況に追い込まれることがないように本件Y2発言に対する謝罪やXはY会社で勤務を続けるか否か考えてくること、今日は今すぐ帰っても良い旨のXに対して退職を示唆するような発言を撤回させるなどの措置を取るべき義務があったというべきである。それにもかかわらず、前記で認定したとおり、Y会社が何の措置も取らなかったため、XはY会社に居づらくなって退職しているから、Y会社はXの退職による損害を賠償する責任を負う。