平安閣事件(有期労働契約・雇止め)

平安閣事件(最高裁昭和62年10月16日第二小法廷判決)
[事案の概要]
X1は昭和46年2月に、X2は昭和49年11月にそれぞれYに雇用された。X1がYに採用された際、労働契約書が作成されたことや、特段雇用期間についての説明や取り決めがされたことはなかった。Yは、昭和55年頃からパートの従業員の雇用期間を1年と明記した労働契約書を取り交わすようになったが、その際、右期間が経過すれば当然に雇用契約が終了するものである等の特別な説明はなされず、X1らとしては従前と同様右期間の定めがあっても特段のことがない限り将来も引き続け働けるものと考えていた。


X1に関しては、昭和55年5月付けで、(1)同月から昭和56年5月までを雇用期間とする、(2)厨房係を業務とする、(3)始業時刻を9時、終業時刻を17時とする、(4)退職に関する事項は就業規則による、(5)Yの定める「臨時従業員及び嘱託」就業規則に従って誠実に勤務する等の条項のある労働契約書が取り交わされた。その後も同様の労働契約書が取り交わされている。X2に関しても、昭和56年10月に同様の労働契約書を取り交わし、昭和57年5月付けで、今回の更新をもって最終とし再度の更新はしない旨の特約事項があるほかは前年と同様の労働契約書を取り交わした。Yは、昭和58年4月にX1及びX2に対して、同年5月をもってパートの契約期間が満了するので、契約更新はしない旨の通告を行った。X1及びX2は、Yに対して雇用関係が存在することの確認を請求した。

[判決の要旨]
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、是認することができ、その過程に所論の違法はない。[原判決の要旨]右認定の事実によると、本件雇用契約を期間の定めのない契約ないしはその定めのない契約に転化したものと解することはできないものの、実質においては、期間の定めは一応のものであって、いずれかから格別の意思表示がない限り当然更新さるべきものとの前提のもとに、雇用契約が存続、維持されてきたものというべきであるから、期間満了によって本件雇用契約を終了させるためには、雇止めの意思表示及び剰員を生ずる等従来の取扱いを変更して雇用契約を終了させてもやむを得ないと認められる特段の事情の存することを要するものと解するのを相当とするところ、Yは、期間満了を主張するのみであって、X1らに対し雇止め(契約更新拒絶)の意思表示をしたことないしは右特段の事情の存することにつき何ら主張立証しない(右意思表示、特段の事情の存在を認めるに足りる的確な証拠もない。)から、Yの抗弁は理由がなく、X1らとY間の雇用契約はY主張の期間満了により終了することなく、なお存続しているものというべきである。