三田尻女子高校事件(整理解雇)

三田尻女子高校事件(山口地裁平成12年2月28日決定)
[事案の概要]
Yは、高等学校を設置する学校法人であり、Xらはその教育職員として勤務してきたところであるが、Yは「生徒減による経営難」を理由に、平成8年度において、21名の人員削減を行い、平成9年度においても、同様の理由により、同年11月29日と平成10年1月21日、希望退職を募集し、同月26日から29日にかけて、Xらを含む10名の教職員に対して、指名退職勧奨を行った。そして、平成10年3月24日、Yは、退職勧奨を受け入れなかったXらを含む7名の教員に対し、「Yの財務状況が極めて厳しいため、即時解雇する」旨の意思表示をなしたものである。


[決定の要旨]
一般に、使用者の財政状態の悪化に伴い、人件費削減のための手段として行われるいわゆる整理解雇は、労働者がいったん取得した使用者との雇用契約上の地位を、労働者の責に帰すべからずざる事由によって一方的に失わせるものであり、それだけに、労働者の生活に与える影響も甚大なものがあるから、それが有効となるためには、(1)経営上、人員削減を行うべき必要性があること、(2)解雇回避の努力を尽くした後に行われたものであること、(3)解雇対象者の選定基準が客観的かつ合理的であること、(4)労働組合又は労働者に対し、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき、納得を得るための説明を行い、誠意をもって協議すべき義務を尽くしたこと、以上の各要件すべていずれも充足することが必要である。そして、本件のごとく、使用者たるYが私学である本校の設置・経営者であり、労働者たるXらがその教員であるような場合、Xらが主張するとおり、安易な教員数の削減は、教育の質の低下を来たし、そのしわ寄せを生徒に押しつける事態を生じさせるおそれがあることから、右教員の整理解雇に当たっては、右に挙げた整理解雇の制限法理が、一般私企業の場合に比してより厳格な判断基準の下に適用されるべきと解される。Yについては、本件各解雇に際し、将来的予測として帰属収入の恒常的減少が避けられない状況にあることから、その資産を維持すべく、消費支出、特にその中でも大きな割合を占める人件費の削減が必要であるとの認識を有してこれに当たっていたということ以上の点は指摘し難いところである。かえって、Yは、各解雇時点において、直ちに指名解雇の手段による更なる人員削減を行わずとも、継続的に希望退職者を募りつつ、一定期間、それ以後における長期的な視野に立った人件費削減及び収入増加に向けた取組みに関する協議を十分に尽くすなどの手段を講ずる一方で、同期間内の消費支出超過分については、比較的優良な資産の一部を取り崩してこれを充てることにより、相応の程度柔軟かつ弾力的に対処し得るだけの財政的な体力を有していたと思料される。本件の場合、Yにつき、本件各解雇に至るまでに、希望退職者を募る方法により指名解雇を避けるべく配慮したことは一応認めることができるものの、同各解雇当時、客観的に見て、Xらをして、その意思とは無関係に、Yの教員たる地位を一方的に失わせるという、平成8年度に続き、これと一環をなすとみられる再度のかつ大幅といってよい人員削減をしなければならない程に、その財政状況が悪化した状況にあり、かつ、Yが同各解雇を回避すべく努力を尽くした上でこれらをなしたとの各疎明はいずれも足りないというべきである。加えて、本件各解雇に際して、Yが、妥当な手続を尽くしたとも解し難い。そして、如上検討したところを、前記に掲げたより厳格な判断基準に則った4要件に照らした場合、本件各解雇は、上記4要件のうち、(1)、(2)及び(4)を備えていないとみられるので、明らかに、右4要件全てをいずれも満たしているとはいえないと判断するのが相当である。したがって、右要件中(3)につき検討するまでもなく、本件各解雇は、許容される整理解雇の場合に当たらず無効である。