エクイタブル生命保険事件(降格)

エクイタブル生命保険事件(東京地裁平成2年4月27日決定)
「役職者の任免は、使用者の人事権に属する事項であって使用者の自由裁量にゆだねられており裁量の範囲を逸脱することがない限りその効力が否定されることはなく、就業規則などに根拠規定がなくとも、その人事権に基づく降格処分ができないとはいえないとした。」


[事案の概要]
X1及びX2は、Yの設立と同時に営業社員として入社した者であるが、昭和63年2月に、X1は池袋支社第2営業所長に、X2は同支社第1営業所長に、それぞれなった。Yは、平成元年6月に、X1らに対して、同年7月から所長代理に降格する旨を通告し、X1らはいずれも承諾できないと答えたが、YはX1らを降格した。


[決定の要旨]
役職者の任免は、使用者の人事権に属する事項であって使用者の自由裁量にゆだねられており裁量の範囲を逸脱することがない限りその効力が否定されることはないと解するのが相当である。これを本件についてみると、Yは本件業績表の各項目の成績によって各営業所長の能力評価を行い、これに社長等の各営業所長との面談の結果や各支社長からの各営業所長の業務遂行状況についての報告を加味して総合的に営業所長としての適性を判断した結果X1らを含む4名の営業所長について能力が劣ると判断して所長代理に降格する旨を通告し、X1らの承諾を得られないままX1らを所長代理とした場合の受入れ営業所側の不都合を考慮して本件降格を行ったことは前記認定のとおりであり、これによれば本件降格についてYがその裁量権を逸脱したものとは認められないものといわなければならない。X1らは、本件降格は給与規定15条の6第2項に違反すると主張し、疎明資料によれば、Yの就業規則第2条には「この規則において従業員とは第3条に定める者を除き、会社の雇用するすべての者をいう。即ち、管理職、事務職、専門職及び営業社員をいう。」との、第29条には「従業員の給与に関しては、給与規定および営業社員給与規定の定めるところによる。」との、Yの給与規定第2条には「この規程の適用の範囲は従業員のうち、事務系職掌の管理・専門職、一般事務職および営業系職掌の管理職・営業事務職とする。」との、第15条の6第2項には「規定の役職を解任された者に対しては懲戒の場合を除き、降級させることはない。ただし、職務給・営業管理職手当は支給しない。」との規定があることが一応認められる。このようにYの給与体系は営業社員とその他の従業員とを明確に区別したものとなっているのであるから、給与規定第15条の6第2項が適用になるのは給与規定第2条に規定されている職種相互間の異動の場合であり、営業管理職から給与体系の異なる営業社員への異動の場合には適用されないものと解するのが相当である。本件降格は営業管理職から営業社員への異動であるから、給与規定15条の6第2項は適用されず、本件降格が同条項に違反するということはない。また、疎明資料によれば、Yの就業規則には懲戒処分の一種類として降格処分が規定されていることが一応認められるが、懲戒処分としての降格処分が定められているからといって、使用者の人事権に基づく降格処分の行使ができなくなるものと解するのは相当ではない。したがって、本件降格がYの就業規則及び給与規定に違反するものとはいえない。 以上によれば、本件降格に違法な点はなく有効なものであると解される。