角川文化振興財団事件(有期労働契約・黙示の更新)

角川文化振興財団事件(東京地裁平成11年11月29日決定)
[事案の概要]
Yは、出版企画の編集・制作を行う財団であり、平成2年から「日本姓氏歴史人物大辞典」(以下、姓氏大辞典とする。)の編集・制作を企画し、編纂を行っていた。姓氏大辞典を全県分刊行しようとするならば10年以上を要することが予想されていた。


X1は、Yにおいて働き始めた後である平成3年1月に3年という期間を定めた労働契約に切り替えたが、その後に契約書を作成して労働契約を更新するという手続を行わないまま平成11年3月末までYで働いていた。また、X1を除くその余のX2らは、平成2年11月以降Yにおいて働き始めた当初に、2か月という期間を定めた労働契約を締結し、又は、Yにおいて働き始めた後に2か月という期間を定めた労働契約に切り替えたが、労働契約を締結し、又は切り替えた後に契約書を作成して労働契約を更新するという手続を行わないまま平成11年3月まで働いていた。YがX1らを解雇したところ、X1らは、Yに対して労働契約上の地位にあることの仮処分を請求した。

[決定の要旨]
1年を超えない期間を定めた労働契約の期間満了後に労働者が引き続き労務に従事し、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、民法629条1項により黙示の更新がされ、以後期間の定めのない契約として継続されるものと解され、また、1年を超える期間を定めた労働契約は労働基準法14条、13条により一定の事業の完了に必要な期間を定めるものの外は期間が1年に短縮されるが、その期間満了後に労働者が引き続き労務に従事し、使用者がこれを知りながら異議を述べないときは、民法629条1項により黙示の更新がされ、以後期間の定めのない契約として継続されるものと解される。そうすると、X1を除くその余のX2らとYとの間の労働契約はYにおいて働き始めた当初に締結した労働契約又はYにおいて働き始めた後に切り替えた労働契約で定めた2か月という契約期間が経過した後は期間の定めのない契約として継続されているというべきである。また、X1とYとの間の労働契約はX1が姓氏大辞典の編さんに携わる目的で締結されたが、姓氏大辞典は全県刊行となればその完結までには10年以上を要することが予想されたというのであるから、3年という契約期間が姓氏大辞典の編さんという事業の完了に必要な時期を定めたものということができないことは明らかであって、そうであるとすると、X1とYとの間の労働契約の期間は1年に短縮され、X1とYとの間の労働契約は右の1年という期間が経過した後は期間の定めのない契約として継続されているというべきである。以上によれば、X1らとYとの間の労働契約は本件解雇に及んだ時点において期間の定めのない契約であったと認められる。