就業規則の効力・変更と労働契約の関係に係わる判例一覧

秋北バス事件(昭和43年 最高裁大法廷判決)
「新たな就業規則の作成又は変更によって、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないと解すべきであるが、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されないとした。」


タケダシステム事件(昭和58年 最高裁第二小法廷判決)
「就業規則の変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっては、変更の内容及び必要性の両面からの考察が要求され、変更により従業員の被る不利益の程度、変更との関連の下に行われた賃金の改善状況のほか、社内規律の保持及び従業員の公平な処遇のため変更が必要であったか否かを検討し、更には労働組合との交渉の経過、他の従業員の対応、関連会社の取扱い、我が国社会における一般的状況等の諸事情を総合勘案する必要があるとした。」


第一小型ハイヤー事件(平成4年 最高裁第二小法廷判決)
「就業規則による賃金の計算方法の変更における合理性の有無については、従業員の利益をも適正に反映しているものかどうか等との関係で、新計算方法を採用した理由は何か、会社と労働組合との間の団体交渉の経緯等はどうか、新計算方法は、会社と労働組合との間の団体交渉により決められたものであることから、通常は使用者と労働者の利益が調整された内容のものであるという推測が可能であるが、他の組合との関係ではこのような推測が成り立たない事情があるかどうか等をも確定する必要があるとした。」


第四銀行事件(平成9年 最高裁第二小法廷判決)
「賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については、高度の必要性に基づいた合理性が必要であるとした上で、具体的には、労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきであるとした。」


みちのく銀行事件(平成12年 最高裁第一小法廷判決)
「就業規則の変更により一方的に大きな不利益を受ける労働者については、不利益性を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきであるため、それがないままに労働者に大きな不利益のみを受忍させることには、相当性がなく、その不利益性の程度や内容を勘案すると、賃金面における変更の合理性を判断する際に労働組合の同意を大きな考慮要素と評価することは相当ではないとした。」


大曲市農業協同組合事件(昭和63年 最高裁第三小法廷判決)
「就業規則の定めが合理的なものであるとは、就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なおその労使関係における就業規則の定めの法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものをいうとした。特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、その定めが、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるとした。」


電電公社帯広局事件(昭和61年 最高裁第一小法廷判決)
「事業場の労働者は、就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるとした。」


日立製作所武蔵工場事件(平成3年 最高裁第一小法廷判決)
「就業規則の規定の内容が合理的なものである限り、それが具体的労働契約の内容をなすとした。」


羽後銀行(北都銀行)事件(平成12年 最高裁第三小法廷判決)
「就業規則の変更により、完全週休2日制の導入と1日の労働時間増(年95日の特定日は1時間、その他は10分)を行ったことにつき、平日の労働時間延長の必要性、変更後の労働時間も必ずしも長時間でないことから合理性が認められた。」


函館信用金庫事件(平成12年 最高裁第三小法廷判決)
「就業規則の変更により、完全週休2日制導入と1日25分の労働時間増を行ったことにつき、平日の労働時間を延長する必要性、変更後の労働時間も必ずしも長時間でないことから合理性が認められた。」


朝日新聞社小倉支店事件(昭和27年 最高裁大法廷判決)
「会社側が労働基準法第106条第1項所定の爾後の周知方法を欠いていたとしても、既に従業員側にその意見を求めるため提示され、その意見書が附されて届け出られたものであるから、就業規則自体の効力を否定する理由とはならないとした。」


日本コンベンションサービス事件(平成10年 大阪高裁判決)
「就業規則における懲戒解雇された者には退職金を支給しないとする定めの新設について、適法な意見聴取が行われた上で届けられたものともいえず、一般的に従業員に周知した事実が認められないことから、その効力が生ずるものではないとした。」


須賀工業事件(平成12年 東京地裁判決)
「賞与は「支給時点の在籍者に対し支給する」旨定めた賃金規則が、労働基準法106条1項所定の爾後の周知方法を欠いているとしても、それを理由に就業規則及び賃金規則が無効であるということはできないとした。」


日本ニューホランド事件(平成13年 札幌地裁判決)
「会社と労働組合で組織される経営協議会の決定事項が就業規則として認められるかについて、少なくとも労働基準法第106条第1項の定める方法と同視し得るような周知方法が採られない限り、就業規則としての効力は認められないとした。」


NTT西日本事件(平成13年 京都地裁判決)
「労働基準監督署に対する就業規則の届出は、就業規則の効力発生要件ではなく、使用者が就業規則を作成し、従業員一般にその存在及び内容を周知させるに足る相当な方法を講じれば、関係当事者を一般的に拘束する効力を生じるとした。」


ソニー・ソニーマグネプロダクツ事件(昭和58年 東京地裁判決)
「労使慣行が一種の規範として労働条件を規律していたが、黙示的にも個別的な労働契約の内容になっていなかった場合における、就業規則による労使慣行の変更について、就業規則の不利益変更法理によって判断した。」


大興設備開発事件(平成9年 大阪高裁判決)
「採用時に60歳を超えていた者に対する就業規則の退職金に関する定めについて、就業規則には高齢者及びパートタイムの従業員にも適用されることを前提とした定めがあること、高齢者に退職金を支給しないという明文の定めがないことから、適用があるとした。」


済生会・東京都済生会中央病院(定年退職)事件(平成12年 東京高裁判決)
「同一企業の複数の事業場にそれぞれ異なる内容の就業規則が制定されていて、調整規定が設けられていない場合に、その複数の事業場の職務を兼務している労働者がいるときは、ある事業場の職務に関しては当該事業場の就業規則が適用になるのが原則であるが、複数の事業場の職務が明確に区別できないような場合等には、各就業規則の合理的、調和的解釈により、その労働者に適用すべき規定内容を整理、統合して決定すべきとした。」


御國ハイヤー事件(昭和58年 最高裁第二小法廷判決)
「就業規則である退職金規定の不利益変更につき、代償となる労働条件を何ら提供せず、不利益を是認させるような特別の事情も認められないので、合理性が認められなかった。」


朝日海上火災保険事件(平成8年 最高裁第三小法廷判決)
「就業規則による63歳から57歳までの定年年齢の引き下げと同時に行われた退職金の基準支給率の引き下げにつき、退職金支給率の引き下げには必要性が認められたが、定年年齢の引き下げによって退職することとなった労働者の退職金を引き下げるほどの合理性を有するとは認められなかった。」


アーク証券事件(平成12年 東京地裁判決)
「就業規則の変更により、変動賃金制(能力評価制)を導入したことにつき、一般的な制度として見る限り、不合理な制度であるとはいえないが、代償措置等が採られておらず、変動賃金制(能力評価制)を導入しなければ企業存亡の危機にある等の高度の必要性がなかったので、合理性が否定された。」