大平製紙事件(労基法第9条の労働者)

大平製紙事件(最高裁昭和37年5月18日第二小法廷判決)
「塗料製法の指導・研究に従事することを職務内容とするいわゆる嘱託であって、直接上司の指揮命令に服することなく、また遅刻、早退等によつて賃金が減額されることはない等一般従業員と異なる待遇を受けていても、毎日ほぼ一定の時間会社に勤務し、これに対し所定の賃金が支払われている場合には、労働法の適用を受ける労働者と認めるべきとした。」


[事案の概要]
Xは、昭和26年6月21日に、A株式会社社長の紹介により、洋紙、板紙および和紙の製造、販売を営業目的とするY社B工場の「ドクター塗装機械」用の塗料に関する技術指導および塗料の研究をするということで同工場に週5日赴くことになり、それ以来その仕事に従事していた。Yは、昭和29年2月20日までの間は、A会社に対し、Xが同社の職員としてY社B工場に指導のため出張した出張工員という形式で1日1000円の割合による金員を支払っていたが、同月21日からはXをYの嘱託として、直接Xに本給25000円(昭和30年7月より28000円)を支払った外、時給の2割5分増で計算したいわゆる残業手当を支払ってきた。さらに、Xは一般従業員と多少違った待遇を受けたとはいえ、当初は週5日、後に週6日出勤し、出勤時間も朝9時頃から午後4時頃までとほぼ一定していた。Yが、昭和31年8月9日、Xに対し30日分の平均賃金を提供して解雇の意思表示をしたことに対して、Xは、XとYの間に雇用関係が存在することの確認を請求した。


[判決の要旨]
原判決(その引用する第一審判決)の確定した事実によれば、Xの職務内容は、Y会社において「ドクター塗装機械」用の塗料製法の指導、塗料の研究であり、一般従業員とは異なり、直接加工部長の指揮命令に服することなくむしろ同部長の相談役ともいうべき立場にあり、また遅刻、早退等によつて給与の減額を受けることがなかつたとはいえ、週6日間朝9時から夕方4時まで勤務し、毎月一定の本給のほか時給の2割5分増の割合で計算した残業手当の支払を受けていたというのであるから、本件嘱託契約が雇用契約(厳密にいえば、労働契約)であつて、Xは労働法の適用を受くべき労働者であるとした原審の判断は、正当であつて、所論の違法はない。