朝日火災海上保険事件(配置転換は無効)

朝日火災海上保険事件(東京地裁平成4年6月23日決定)
「会社批判の中心人物を対象として行われた配置転換命令につき、当該労働者を嫌悪し、不利益な取扱いをなしたものと推認した。」


[事案の概要]
Xは、昭和34年に各種損害保険業を営む株式会社であるYに入社し、大阪、京都、東京の各支店で勤務した後、昭和58年以降木更津営業所で勤務していた。Yは、平成3年11月22日、Xに対し、米子営業所への配転命令を行った。Xは、Y入社と同時にY従業員で構成されているA組合B支部に所属し、B支部の役員を歴任したほか、A本部書記長の職にも就いていたが、本件配転命令時点においては組合役員には就いていなかった。


[判決の要旨]
Yの就業規則にはYは業務上の必要により転勤を命ずることができる旨定められており、Xも入社に際しては、入社のうえはどこに転勤しても差し支えない旨の書面を差し入れていることが一応認められ、したがってYは業務上の必要に応じ、その裁量によってXの勤務場所を決定することができるものというべきであるが、それは無制限に行使できるものではなく、当該転勤命令に業務上の必要性が存しない場合または業務上の必要性があっても当該転勤命令が他の不当な動機・目的を持ってなされた場合もしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるような場合は、当該転勤命令は権利の濫用として無効となるものというべきである。これを本件についてみるに、前述のように、Xの米子営業所への本件配転命令は、Yのこれまでの高齢者の人事異動からすると異例なものであり、しかも、その業務上の必要性は全く否定することはできないとしても極めて疑問であり、更にこれまでのXとYとの前記関係からしてYにおいてはXを嫌悪していたことが窺われることからすると、本件Xに対する配転命令は、XがこれまでYの諸方針に反対し、組合内でYに強く対抗する姿勢を取ってきたこと及び組合の指導部を退いた後も、自らと同じ姿勢をとる者とYとの訴訟において中心となってこれを支援し、訴訟においてYを批判する証言をし、また現在もYに対して中心となって不当労働行為救済申立てを続けているXを嫌悪し、これに対し不利益な取扱いをなしたものと推認することができ、したがって、YのXに対する本件配転命令は、不当な動機・目的をもってなされたものとして権利の濫用に該当し、無効であるというべきである。