岡田運送事件(休職)

岡田運送事件(東京地裁平成14年4月24日判決)
「就業規則には休職の定めがあるところ、使用者が休職期間を待たずに労働者を解雇したことについて、使用者には休職までの欠勤期間中解雇するか否か、休職に付するか否かについて裁量があり、この裁量を逸脱したと認められる場合に解雇権濫用として解雇が無効となるとされたが、本件では休職期間を経過したとしても就労は不能であったのであるから、解雇権の濫用になるとはいえないとされた。」


[事実の概要]
Yは、貨物自動車運送業等を業とする株式会社であり、Xは、平成8年1月末日にYに雇用された者であるが、Xは、平成11年7月29日、脳梗塞との診断を受け、同日から欠勤した。Xは、Yに対してしばらく欠勤することを連絡し、8月には診断書を提出したが、9月以降、診断書の提出の必要をYに確認した際に、上司が、YはXを解雇する方針であるから診断書は不要と告げたため、診断書を提出しなかった。Yは、同年10月30日、Xに対し、新たな診断書及び欠勤届を提出せず無断欠勤をしたことを理由として懲戒解雇の意思表示をしたことから、Xは、当該解雇の無効を争った。なお、Yの就業規則には、傷病欠勤が6ヶ月以上引き続く場合に3ヶ月の休職とする定めがあった。


[判決の要旨]
Xの診断書不提出等が上司のこれを不要とする言動に基づくものである以上、Xの診断書不提出等が企業秩序に違反する行為とはいえないことは明らかであり、Xの診断書不提出等の行為には、正当な理由がある。従って、Xの無届欠勤は、就業規則23条3号イ「正当な理由なしに無届欠勤7日以上に及ぶとき」には該当しないと解するのが相当である。<中略> Xの欠勤が懲戒解雇事由に該当しないことから、本件解雇は、Xの無断欠勤を理由とする懲戒解雇としては無効である。<本件懲戒解雇の意思表示は、予備的に普通解雇の意思表示を含むものと認定した上で、普通解雇の効力について>Xは、本件解雇通告の時点<中略>で、トラック運転手としての業務につくことが不可能な状態であったことが認められるというべきで、就業規則11条4号の「身体の障害により業務に堪え得ないと認めたとき」の普通解雇事由に該当する。ところで、Xは、Yの就業規則8条ないし10条によれば、業務外の傷病欠勤が6ヶ月を越えて、当分の間職務につくことができない場合は、3ヶ月の休職期間を置く旨定めているところ、本件のように、同規則8条を適用することなく、直ちに解雇をすることは、労使間の信義側に違反する旨主張する。Yの就業規則8条ないし10条は、業務外の傷病による長期欠勤が一定期間に及んだとき、使用者がその従業員に対し、労働契約関係そのものは維持させながら、労務の従事を免除する休職制度であるところ、この趣旨とするところは、労使双方に解雇の猶予を可能とすることにあると解される。したがって、かかる休職制度があるからといって、直ちに休職を命じるまでの欠勤期間中解雇されない利益を従業員に保障したものとはいえず、使用者には休職までの欠勤期間中解雇するか否か、休職に付するか否かについてそれぞれ裁量があり、この裁量を逸脱したと認められる場合にのみ解雇権濫用として解雇が無効となると解すべきである。本件では、Xは、平成13年1月31日まで就労不能と診断されており、仮に休職までの期間6か月及び休職期間3か月を経過したとしても就労は不能であったのであるから、YがXを解雇するに際し、就業規則8条に定める休職までの欠勤期間を待たず、かつ、休職を命じなかったからといって、本件解雇が労使間の信義則に違反し、社会通念上、客観的に合理性を欠くものとして解雇権の濫用になるとはいえない。本件解雇は、普通解雇としては、客観的、合理的な理由があり、社会通念上相当なものとして是認することができるから、解雇権を濫用したものとはいえない。