河口宅地造成事件(労基法第9条の労働者)

河口宅地造成事件(最高裁昭和41年4月22日第二小法廷判決)
「自己所有の工具類を使用していた石工と宅地造成業者との関係について、実質的に支配従属の関係にあり、労働基準法上の労働者と使用者の関係にあったとした。」


[事案の概要]
Xは石工であり、主としてA組(土建業)に常用ではないが雇われ、賃金として日当600円から800円を得ていた。
当時、B市で宅地造成工事を施工していたYは、右工事につき石工が必要となったので、A組の主宰者Cに依頼したところ、Xを紹介された。Xは、Yと話し合った上で、日当700円(後に800円)の契約で、昭和32年11月中旬頃から、右工事現場で、自己所有の工具類を使用して掘り出した石を割る作業に従事した。当時右工事現場においては、数名の石工がこのような作業に従事しており、Xも含めてこれらの者はすべてYの管理と監督の下に作業に従事しており、その賃金は、Yから毎月5日に支払われていた。Xは、その作業中に負傷したため、Yに対し、労働基準法上の療養補償、休業補償及び障害補償を請求した。

[判決の要旨]
原判決の、YとXの間に使用者と労働者の関係が存する旨の判断は、その認定している事実関係に照らして是認しえなくはない。


[原判決の要旨]
〈事案の概要における事実を認定した上で、〉もとより石工なる職業は大工等と同じく独立性があり多く自主営業の形態をとるものではあるけれども、右認定の事実によれば、右工事現場においてXがYに対し右の如き労務を提供するにあたつては、実質的に支配従属の関係にあったことが明らかであるから(右認定のXが自己所有の工具類を使用していた事実は右認定を左右するものではない)、XとYとは労働基準法上の労働者と使用者の関係にあつたものというべきである。Yはその然らざる旨を縷々主張するけれども、その前提とする事実が右認定の通り認められないので、右主張はこれを認めることができない。