興栄社事件(労基法第9条の労働者)

興栄社事件(最高裁平成7年2月9日第一小法廷判決)
「合資会社の有限責任社員について、定款によって業務執行の権限は与えられておらず、代表者の指揮命令の下に労務を提供していたことにとどまり、支払われていた「給料」はその対償として支払われたものということができるため、従業員を対象とする退職金規定が適用されるとした。」


[事案の概要]
Xは、昭和33年10月にYに雇用され、昭和55年末までは事務員として、その後昭和56年3月頃までは総務部長兼経理部長として勤務し、さらにその後は平成2年8月末に退職するまで専務取締役の地位にあった。Xは、Yに対し、主位的に役員退職金支給基準に基づく退職金を請求し、予備的に退職金規定に基づく退職金を請求した。原判決においては、当該予備的請求が認容された。


[判決の要旨]
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首背するに足りる。原審が適法に確定したところによれば、Xは、合資会社であるYの有限責任社員であるが、定款によってYの業務執行の権限が与えられていたことはうかがわれず、Xが「専務取締役」の名称の下にYの代表者である無限責任社員の職務を代行していたのは、Y代表者の指揮命令の下に労務を提供していたにとどまるものであり、Xが支払を受けていた「給料」はその対償として支払われたものであるということができる。したがって、有限責任社員となった後のXについてもYの従業員を対象とする本件退職金規定が適用されるとした原審の判断は、正当として是認することができる。