東海旅客鉄道(新幹線運行本部)事件(配置転換は無効)

東海旅客鉄道(新幹線運行本部)事件(大阪地裁平成10年12月21日判決)
「業務上の必要性からではなく、反省を促すために配置転換が行われた。」


[事案の概要]
原告Xが所属するJR東海労が行った新幹線「のぞみ」減速闘争に対抗して、被告会社YがXの「のぞみ」乗務の受領を拒否したことに対し、Xが東京運転所での点呼において車発機等を返納するようにとの助役の指示を拒否して持ち帰り、大阪運転所に返納したことを理由としてなされた、Xを運転士から車両技術係へ配転する命令の効力等が争われたものである。


[判決の要旨]
Xの車発機等の持ち帰りは、上司の業務命令に違反したものというべきであるし、その後、YがXに実施した教育期間におけるXの対応は、終始、自己の行為の正当性を主張し続け、最終的には業務命令違反について反省する旨の発言はあったものの、全体としては自らの非を認め、改めるという態度でなかったことが認められる。しかしながら、本件当時、JR東海労は、本件減速闘争を展開している最中であり、Yに受領拒否という対抗手段を採られることによって、本件減速闘争の争議行為としての効果を大きく減殺されることになるため、その違法、不当を主張し、これに極力抵抗しようとしていたのであって、労使間の対立は厳しいものがあった。Xが、受領拒否に伴う点呼に当たって、助役の指示に従うことなく車発機等を持ち帰った行為を、このような背景事情と切り離し、単なる日常的な業務遂行過程のなかで生じた業務命令違反と同視して、これからXの運転士としての適性を問題とすることは相当ではないというべきである。〈中略〉また、Yが行った再教育についても、その教育内容は従前からの指導教育等として実施してきた就業規則や作業標準等の全般的な復習であり、自習中心のものであって、しかも、当初からXが自己の非を認めて反省の態度を示せば打ち切るとの方針で実施されていたというのであるから、Xの業務命令違反の原因が就業規則等の知識不足や認識不足にあるとみて、これを補うという具体的必要から行われたのではなく、結局その目的は、Y側からみた非違行為の反省を迫るものであったというほかない。したがって、そのような教育過程において、XがYと対立する組合員としての立場から、これに反発し、容易にYの期待するような反省の態度を示さなかったのもやむを得ないところであり、しかも、Xは、少なくとも、最終的には業務命令違反の点は反省すると述べており、当時の労使対立の状況下において、それ以上に、Yの期待する反省を要求することは、変節を強いることにもなりかねないのであって、右のようなXの対応をもって、運転士としての適性の問題とすることもまた、相当とは言い難い。むしろ、このような労使間の対立状況を度外視してみたとき、Xにはこれまで運転士業務においても、車掌業務においても、その適性を疑われるような格別の非違行為はなかったのであるから、Xにこのまま運転士を継続させたとしても、Xが業務命令違反や現金管理の厳正に支障をきたすなどの職場秩序違反を再発させると予想することは困難というべきであり、他方、本件配転命令が、Xの資質適性等に照らし配転先がその職場としてより適切であるとの判断からなされているものではないことなどの諸事情に照らせば、配転命令権について使用者に広い裁量が認められることを考慮しても、本件配転命令に業務上の必要性があったとは認め難い。したがって、本件配転命令は無効というほかな〈い。〉